永遠に君を愛する�A*

ボビーの『穴蔵』は、デビルハンター達のたまり場である。そこで彼らは情報屋から仕事を貰う。

まだ駆け出しだったがその卓越した能力によりダンテは、デビルハンター達から一目置かれていた。

そんなある日、何時ものようにボビーの『穴蔵』を訪れたダンテは、ひとりの女性と出会う。
情報屋のエンツィオから、彼女が今回の仕事のパートナー だと聞かされた。
「貴方がダンテ?」
「あんた、誰だ?」
「私はナーナ。よろしくね?」
そう挨拶をする彼女は黒髪を高い位置でひとつにまとめており、躍動感に溢れた同色の瞳が印象的だった。
あの時代、女のデビルハンターは珍しかった。特にナーナは細身で華奢だ。
本当にこんな華奢な女で大丈夫なのか?
とダンテは思った。が、その思い込みはすぐ覆えされる。
ナーナはダンテも舌を巻くほど戦いに長けていた。ふたりは初めて組んだにも関わらず、まるで長年連れ添ったパートナーのようで。
これを機にダンテとナーナは、度々コンビを組んで仕事をする事が多くなり。
そして二人は、何時しか愛し合うように
なった。

ある時ナーナはダンテの腕の中で何故自分がデビルハンターになったのかを初めて話した。

「ねぇ、ダンテ?」
「ん……何だ?」
「私の話しを聞いてくれる?」
「あぁ、何でも話してみろよ」
ダンテはナーナの長い黒髪を弄んでいる。
「私ね婚約者がいて、もうすぐ結婚式を挙げる予定だったの」

2年前。ナーナが普通の会社員だった頃――――。

ナーナには幼なじみの恋人がいた。
彼の名前はローラン・M・グラハム。大手企業のシステムエンジニアだった。
ふたりは1ヶ月後に結婚式を控えており、まさに幸せの絶頂だった。

あの悍ましい事件さえ起こらなければ……。

2年前。
あるカルト教団が『世界を変える力』と称して、ある悪魔を呼び出した。
だがその力は強大で、教団を飲み込み、ナーナの住んでいた街を瞬く間に破壊して行った。

人々の悲鳴と怒号が街中に響き渡る。

ある者は、首を落とされ。
ある者は、身体を真っ二つに切断され。
ある者は、業火に焼かれ。

――――その光景は、まさに『地獄』だった。

ナーナも迫り来る悪魔から必死に逃げていた。
何かあったらふたりはの秘密の場所で落ち合おうと約束していたから、その思いだけでナーナは走っていた。
そして辿り着いたのは、街外れにある荒れ果てた無人の館。
幼い時、二人で遊んだ秘密の場所。

―――キィィィ……。

木製の扉を開けて、中に入る。

「ローラン?」

……。

呼び掛けてみるが、返事はない。
先に来ているかと思っていたナーナの心に不安が過る。
(ローラン……)
それを打ち払うかのように首を降り気持ちを落ち着かせ、荒れ果てた館の中、彼の姿を探した。
薄暗い廊下を歩いていると、突き当たりの部屋から明かりが漏れているのに気がついた。
(そこにいるの?)
ナーナは気配を消しその部屋へと近づき、扉の隙間から中を覗いた。
隙間から見えたのは、横たわっている男性の姿。
(まさか!?)
ドクン…ドクン…と鼓動が早くなる。ナーナは扉を開け中に入った。
「ローラン……?」
目の前に横たわっている男性は、ローランだった。彼の眼球はえぐり取られており、無惨にも床に転がっている。身体には無数の引っ掻き傷があり、身体の一部、ちょうど心臓の辺りが空洞になっていた。
部屋の中に漂う血の臭いと愛する彼の無惨な姿に、ナーナは強烈な嘔吐感に襲われた。

ローラン!!ローラン!!

あまりにも無惨な姿に、正視する事は出来なかった。

……いやッ!
…………いやッ!!
………………いやッ!!!

ナーナは耐え切れなくなりその部屋を飛び出した。

何故?……何故?

ナーナは必死に走った。
悍ましいローランの無惨な姿が脳裏に焼き付いて離れない。

―――ガサッ……。

奥の部屋から音がする。それは、ズルズルと鈍い、何かを引きずるような音だった。

―――ドクン……ドクン……。

自分の心臓の脈打つ音がはっきりと聞こえる。

『振り向くな!逃げろ!!』

本能が危険を知らせている。

だがその音の正体を確認すべく、ナーナは振り返った。

(……あ……あぁ……)

言葉が出ない。悲鳴すらも上げられない。恐怖と悲しみで身体が動かない。

……ズ、ズル、ズル……。

ゆっくりナーナに近づいてくる彼は、首の皮一枚、辛うじて胴体についてる頭。眼球は無く、窪みからは血が流れて落ちている。
腕は向くはずのない方向へ曲がっており、 胸はぱっくり大きな空洞ができている。そして下腹部からは腸がはみ出しており、彼はそれを引きずりながら歩いている。
「ローラ、ン……」
辛うじて出た声はかすれていた。
ナーナの声に、ローランの身体がピクリと震える。

……ろして、れ……。

「ローラン……?」

……ころし……くれ……。

直接語りかけるような声無き声。
ローランの僅かに遺された意識が、ナーナに願う。
「……出来ない、出来ないよ!!」
迫りくるローランを見つめる。

……グワォ……グワ……!

ローランであるがすでに異形の者に成り果てた彼は、ナーナに迫りつっある。
「ローラン……」
ナーナはどうする事も出来ずただ立ち尽すしかない。
姿は変わっても、目の前にいるのは幼なじみで恋人のローランなのだ。

……グウォォォ……!

ローランが咆哮を上げ、ナーナに襲いかかった。
「!!!」
ナーナは次に来る衝撃に目を閉じた。

―――ウギャァァァ……!!!

「……」

次に訪れたのは衝撃ではなく静寂だった。恐る恐る目を開けると、そこにローランの姿はなかった。
彼が居たであろう場所には、少量の砂があるだけだった。

――――そして『デビルハンター』と言う職業をナーナは知ったのだった。

不知夜月