色褪せない想いを貴方に�H 想い 完

ナーナが亡くなって、一年が過ぎようとしていた。

間もなくクリスマスが訪れる。

バージルは未だナーナを失った悲しみから立直れていない。

毎夜夢に見るのはナーナの最期。

真っ赤な血に染まったナーナ。

苦しいはずなのに微笑んでいたナーナ。


バージルはバルコニーにいた。

ナーナは生前この場所で読書をするのが好きだった。

椅子に座りながら、目の前に広がる景色を眺める。

陽射しが眩しい。

バージルは一通の手紙をポケットから取り出した。

封の切られていない封筒。

差出人はナーナ。

これが届いた時、誰かの悪戯かと思った。

死んだ人から手紙が届くなんてまずありえない。

だが筆跡は間違いなく彼女の物だった。

「……ナーナ……」

バージルは震える手で封を切る。中からは薄いピンク色の便箋が出てきた。

便箋を開くとフワリと甘い香が鼻をくすぐる。

ナーナの好きだった香。

バージルは逸る気持ちを抑えるように深呼吸をした。

ドクン、ドクン……。

ゆっくりと便箋を開いた。


親愛なるバージル――――。

貴方がこれを読んでいるという事は、私はもうこの世にいないという事ですね。

貴方を一人ぼっちにしてごめんなさい。

先に逝ってしまってごめんなさい。

バージル、貴方は今何をしていますか?

笑っていますか?

哀しみにくれていませんか?

貴方に出会えて私は幸せでした。

貴方と過ごした日々は私の宝物です。

私を愛してくれてありがとう。

私は貴方の側にいます。

だから哀しまないで下さい。

いつか巡り逢えるその日まで……。

私の愛する貴方へ

ナーナ



不意に風が吹き抜けていく。

バージルは背中越しに温もりを感じた。

バージル……。


懐かしい声が聞こえる。


ナーナ、お前はここにいたんだな……。


バージルの瞳から頬を伝い落ちていく。

幾筋も幾筋も頬を伝い落ちていく。


愛する貴方……。


温かい手が頬に触れる。


……私はここにいるわ。


「ナーナ……」


だから哀しまないで……。


バージルにそっと口付ける。


日だまりの中感じるナーナは温かかった。


死してもなお色褪せない想いがそこにあった。


いつか巡り逢えるその日まで……。


風がバージルを優しく包み込んでいった―――。


---アトガキ---
元題は Destiny. です。サイト初期に書いたお話なので恥ずかしいです。アンケートを実施して1位に輝いたのが、バージル切夢でした。オムニバスというか、一つ一つ独立した今までと感じの違う仕様です。

不知夜月