色褪せない想いを貴方に�G 哀しみ
店内は静かだった。
バージルは向かいに置かれた手付かずのコーヒーの湯気が薄れていくのをぼんやりと眺めていた。
ナーナが生きていた頃、よく二人で訪れた。
ナーナはここを訪れると必ずイチゴのケーキを頼んでいた。
幸せそうな顔でケーキを食べるナーナ。
それを見ているのが彼の幸せだった。
ここへ来たのは、自分の中の思い出を整理する為であった。
いや、思い出から逃げ出す為だったのかもしれない。
ナーナを失った後、バージルは寝る暇も惜しんでデビルハンターの仕事に没頭した。
依頼は選ぶ事なく全て受けた。
全てを完璧にこなした。
何かに没頭していれば、ナーナを失った心の渇きを満たす事が出来るはずだった。
だがどんなに戦いに没頭しようが、不意に訪れる空虚感を紛らわせる事は出来なかった。
もう、あの日から随分と経ったはずたのに……。
やりきれない程の空虚感と脱力感。悲しいだとか苦しいだとかそんなのでは無い事も分かっていた。
ナーナが側にいないという事が、これ程辛いのか!
バージルは何度もテーブルに両手の握り拳を押し付けた。
ナーナ!!
この俺の、どうしようもない思いはどうすればいい。
この身体中を蝕むこの気持ちをどうしたらいいんだ。
いつか忘れられるのか。
いつかこの想いすら薄れていくのか。
お前を懐かしく微笑みながら想える時がくるのだろうか。
……それとも、一生このまま……。
ならばいっそ、狂ってしまえば楽なのだ。
唸り声とも啜り泣きとも聞こえる声が低く零れる。
カラン………。
ドアべルが鳴る度に弾かれた様にバージルの顔が上がる。
彼はまだ待っているのだ。
キラリと光が通った。
「!!」
ドアの前には緑葉樹が置かれ、その垣間より彼女の横顔が見える。
だが、半ば浮かした身体から、力が全て消えてしまった。
バージルの横を見知らぬ女性が通り過ぎていく。
「……出よう」
溜息を付き、バージルは立ち上がった。