ダンテ編 Act.1
とある大国のとある街に、
『St.Devil's school』はあった。
男女共学、生徒の自主性を重んじる、自由な校風を売りにしている学園で人気も高かった。
「先生さようなら〜」
終礼が終わると生徒達が一斉に教室から飛び出してくる。
「おう!気をつけてな」
男子生徒には言葉だけ、女子生徒にはボディータッチがお決まりで、生徒達を送り出す。
これが教師ダンテの日常。
特に女子生徒と上手くコミュニケーションをとる方法である。
「ダンテ先生あんたの胸にさりげなく触ってたよね」
「別にいやらしくないからね、構わないわ!ダンテ先生素敵だし〜」
「大人の男って感じ。テクありそうだし」
「私はバージル先生がいいなあ」
「案外ムッツリかもよ」
「それ超ウケるんだけど」
そんな会話が女生徒の間で日々交わされていた。
あれやこれやと騒ぎながら廊下を歩いていた彼女達は、教頭の姿を見つけて口をつぐむ。
「クレド教頭先生さようなら」
「ゴホンッ、さようなら。
(まったく、風紀が乱れている)」
苦々しい表情で女子生徒達を見送りながら、教頭クレドは溜息をついた。
あの男、ダンテがこの学園に来てから、学園の秩序と規律が乱れ始めている。
何故サンクトゥス学園長はあのような男を学園に招いたのか。
クレドには理解不能だった。
ダンテが受け持つクラスは3年1組。とりわけ問題児が多いことで有名であった。
「先生。どさくさに紛れてセクハラまがいの事止めなよ?」
プリントをまとめながらクラス委員長のナーナは、呆れたようにダンテを見つめる。
「これは先生のコミュニケーションだぜ?断じてセクシャルハラスメントではない!」
両手を広げオーバーなゼスチャーをしつつダンテはナーナの席に座った。
銀色の髪に蒼氷(アイスブルー)色の瞳と整った容姿。
不精髭とセクハラがなければカッコいいのに……。
現にダンテ男女問わず高い人気をほこっている。
「はいはい。それは聞き飽きました」
溜息をついたナーナは、まとめたプリントをダンテに渡した。
「お前はホント素直じゃねぇな」
「イタッ!!」
ダンテはナーナの額に軽くデコピンをし、
「そんなんじゃバージルに嫌われるぜ?」
ダンテをキッと睨んでいるナーナに意地悪く笑う。
「私が捻くれるのはダンテ先生だけだから、どうぞご心配なく!!」
少し語気を荒げるナーナにダンテは気にすることもない。
「成る程な。お前が実は俺を好きだと言う事がよーく分かったぜ」
ナーナをからかっているのか、ウインクまで飛び出す。
「……呆れて言う言葉がありません。何で双子なのにクールなバージル先生と違うのかなあ……」
からかわれていた事に対する怒りも忘れたナーナは無意識に呟き、次の瞬間ハッとした。
ダンテの顔から笑みが消え、陽気だった雰囲気がガラリと変わったのだ。
「ナーナ、今何て言った?」
冷たく、射すような視線。
「えっ?あ、あの……バージル先生と双子なのに違う……って」
怒っているのか不機嫌そうなダンテの表情に、ナーナは背筋がぞくりとした。
空気が冷たい。
「!?」
ダンテにきつく腕を捕まれた。
「きゃあぁぁぁ、変態!!」
「黙れ!!いいから来い!!!」
ダンテに力ずくで引っ張られ、無理やり連れて行かれる。
擦れ違う生徒達は『またか』というような表情を二人に向けた。
「人さらい!!変態!!エロ教師!!」
「少し黙れ!!」
大きな手が口を塞いだ。
「!!!」
手足をバタバタさせて抵抗してみるが、構わずダンテはナーナを引き摺る。
「あいつら何をしているんだ?騒々しい」
職員室へ向かう途中目にした光景にバージルは、怪訝な表情をした。