バージル編 Act.10


バージルとダンテは屋上にいた。
ダンテは屋上のフェンスに寄り掛かり腕を組んでいる。
バージルはフェンスに手を掛け、遠くの景色を眺めていた。

「で、何なんだバージル?」
最初に口を開いたのはダンテで、彼は不機嫌だった。
呼び出されてはみたものの、呼び出したバージル本人はだんまりだったから。
「人を呼び出しておいてだんまりかよ!?」
金網がガシャンと悲鳴を上げる。
「静かにしろ、うるさい」
バージルがその音に顔を顰めながらようやく口を開いた。
「喋れるじゃねぇか!」
口角をつり上げ馬鹿にしたような表情でダンテはバージルを見つめる
「俺は回りくどいのは嫌いだ。だから単刀直入に訊く」
バージルもダンテを見つめた。
「?」
「お前はナーナの事をどう思っているのか」
バージルの口から出た意外な言葉に、ダンテの表情が変わる。
驚いたような、戸惑っているような。そんな表情だった。
「おいおい……、いきなりなんだよ?」
「だから単刀直入に訊くと前もって言ったはずだが」
冷ややかな瞳でバージルはダンテを見つめた。
「……あんたはどうなんだ?」
ダンテは頭をクシャクシャと掻く。
これはダンテが困っている時にする仕種だ。
「……俺はナーナが好きだ。彼女がとても気になっている」
バージルはダンテの瞳を見つめしっかりと答える。
「ちょっと待てよ!」
「何だ?」
「俺もナーナが好きだ!」
ダンテは今にもバージルに掴み掛かってきそうな勢いだ。
「ようやく言ったな」
バージルがニヤリと笑う。
「あんたには渡さねぇ!!」
「決めるのはナーナだがな」
余裕の表情のバージルに、ダンテは無性に腹が立ってきた。
「バージル!一発殴らせろ!!」
言葉と共に拳を飛ばす。
「そう易々と殴らせる訳にはいかないな」
バージル愉快そうに笑うとダンテの拳を避ける。それと同時にダンテの鳩尾に自分の拳を喰らわせようとする。
それをダンテは間一髪で避ける。

殴り合っているのにどこか楽しげなふたりだった。

結局ふたりの殴り合いは5時間目が終わるまで続き――――。

騒ぎを訊いて駆け付けて来たクレドに、たっぷり絞られた。

殴り合いの原因をクレドに何度も問い詰められたが、ふたりは決して口を割らなかった。

二人の喧嘩の原因であるナーナは、そんな事とは露しらず保健室のベットでぐっすりと眠っていた。

バージルとダンテとナーナ。

バージルが好きなナーナは、ダンテ
も気になり始めた。

バージルとダンテに好意をもたれているナーナ。

それぞれの恋模様は、
晴れか。曇りか。それとも雨か。

――――今は誰にも分からなかった。

■バージル編・ダンテ編 END■

不知夜月