ふたりの小夜曲(セレナーデ) 第1部【連載中】

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  • 第1話 検事局のお花見

    逆転裁判・逆転検事とアニメ逆転裁判の設定が混ざっています。
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    関東1区地方検事局の中庭には1本の大きな桜の樹があった。毎年春になるとたくさんの花を咲かせ検事局に勤める職員の心の癒しの場所になる。

    幾年もこの桜の樹は人々を癒し、また出会いと別れを静かに見つめてきたのだ。

    『ここが関東1区地方検事局』
    4月。満開の桜の花が私を祝福してくれているようだ。そんなことを思いながら検事局の大きな桜の樹の下で咲き誇る桜の花を見上げていた。時間を忘れるくらいに。
    『失礼だが、キミは新人か?』
    『えっ?』
    不意に声をかけられ振り向けば、ワインレッドのスーツ姿の端正な顔立ちの男性が立っていた。
    (み、御剣検事さん!!)
    憧れの検事と出会えた喜びと首回りの白いフリフリ(後にクラバットと知る)につい目がいってしまう。
    『間もなく入局式が始まると思うのだが、』
    眉間にシワを寄せ呆れたような表情で御剣検事さんは私を見つめている。
    『もうそんな時間ですか!?』
    慌てて時計を確認すると、式まであと10分をきっていた。
    『急ぎたまえ』
    『は、はいいいっ!失礼します!』
    法廷に立った時とは違う、気難しそうな人だなあと思いながら私は検事局の入り口へと走った。

    今思えば、あれが私にとっての――――。

    「ナーナちゃん何をたそがれているんだい?」
    「牙琉検事!?」
    ぼーっと桜の花びらが散るのを眺めていたら優しくかけられた声。そちらに意識を向けると目の前に牙琉検事の青い瞳があった。余りにも近すぎて動けない。
    「もっと熱ぽく見つめて欲しいな」
    笑顔が眩しい。
    「ム、牙琉検事?ナーナくんにくっつき過ぎなのではないか!?」
    「!!」
    声と共にぐいと私を牙琉検事から引き離したのは、検事局きっての高名な天才検事と言われる御剣怜侍検事。彼は私の上司にあたる。私の職業は検察事務官で彼の補佐をしていて、もう6年だ。
    「御剣検事?そんなに硬く考えないでさ楽しく行こうよ」
    「きゃあ!」
    「が、牙琉検事!?」
    素早く肩を抱き寄せられた私は牙琉検事の胸に顔を埋めることになった。ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。彼の香水の匂いだ。
    『イヤー!!キャアー!!』とその場にいた女性事務官たちから悲鳴が上がったのは言うまでもない。

    牙琉響也検事は警察関係者で結成された人気ロックバンド『ガリューウエーブ』のリーダーである(ボーカル、ギター担当)。デビュー当初からミリオンヒットを飛ばしており検事局内でも大人気だ。金色の長髪を束ね、瞳の色は青色。物腰柔らかな人。
    「おい牙琉。俺の特製ブレンドコーヒーを奢るぜ?」
    ゴドー検事のバイザーの赤色がキラリと光る。なんとも言えない圧力。本名・年齢・経歴。全てにおいて謎に包まれている人。私は『嬢ちゃん』と呼ばれ何故か彼に気に入られていた。
    「めめめ滅相もないゴドー検事!!」
    「君は新人の頃とちっとも変わらないな牙琉検事」
    眼鏡をくいと上げるのは亜内検事。ベテランの検事でかつては辣腕検事として活躍していたが、ある弁護士に負けてから弱腰になっていた。
    「ごめんねナーナちゃん(モテないオジサンのやっかみだよね?)」
    ようやく解放された私は、牙琉検事の言葉に曖昧に笑うしかなかった。

    3月の終わりの土曜日の昼下がり。関東1区地方検事局の中庭では、裁判の予定がない検事たちがその担当事務官とお花見をしていた。今年は桜の開花が早くすでに七分咲きだった。

    不知夜月