第2話 バレてしまった秘密
さすがに検事局内なのでお酒は呑めない。みなソフトドリンクを片手に花見をしている。
「御剣検事どうぞ」
「ズルいあたしも!」
いつもは廊下で挨拶をするだけの憧れの検事。花見に参加している事務官の女性陣は、ここぞとばかりに御剣さんの周りを囲んでいた。
(ふふふ。眉間のヒビが深くなっているわね)
御剣さんはとても不器用な人。初めて出会った頃に比べれば少しはマシになったけど、人付き合いや世間話がまだまだ苦手。眉間のヒビが深く刻まれるのはそんな彼が困っている証拠。
「嬢ちゃん、あれはほっといていいのか?」
「大分困ってますよね御剣さん」
「嬢ちゃんは実はドSか?」
「どうでしょうか?御剣さんの所にいたらそうなるかもしれませんね」
ゴドー検事特製ゴドーブレンドコーヒーをいただきながらその光景を眺める。
「美味しいです。温まりますね」
そんな私にゴドー検事は苦笑いしていた。
「それにしても、ナーナちゃんと軽石検事局長が親子とは驚いたよね?」
ソフトドリンクを片手に検事局内で発行されている検事局広報のページをめくっていた牙琉検事が、あるページを開き私に見せてくる。
それは一昨年検事局長に就任した軽石大政 のインタビューが載っているページだった。
「そうだなコーヒーの香り高い苦味が、甘ったるいお子さま味になったくらいだからな」
(……相変わらず良く分からない……)
「私もかなりの衝撃でしたよ」
少し前に起きたある事件で明るみになった私の秘密。ずっと隠していたのに。
「知られたくなかったのになあ……」
父と母は私が小さな時に離婚している。それは仲違いをしたからではない。
その頃の父は名うての検事で、友人である御剣信弁護士と共にある国際的な犯罪組織調べていたらしい。その組織の凶悪化は他の犯罪組織の比ではなく、父は万が一を考え私と母を守るために離婚したと聞いていた。
そして、父は命を狙われながらも御剣弁護士と共にその組織の壊滅をした。
それからも父は実績を重ねて一昨年検事局長となった。前任の一柳万才検事局長が犯罪者となり失職したから(その闇を暴いたのが御剣検事と万才の息子一柳弓彦検事)である。一柳弓彦検事は出張のためにこのお花見には不参加だった。
「知られたくないってどうして?」
「うーん……特別視されるのが嫌だったから、かな?」
「確かに。ナーナちゃんが検事局長の娘さんだって分かっていたら、接し方が違ってたかもね」
「ずいぶんと嬢ちゃんは自意識過剰だぜ」
ゴドー検事は私の空になったコーヒーカップにおかわりのゴドーブレンドを注いでくれる。
「それ褒めてますゴドーさん?」
「褒めてるように聞こえたんなら、嬢ちゃんは大物だ」
「確かに」
4人の笑い声が中庭に響いた。