10.そして、命は巡る

季節は巡り、何度目かの春を迎えた。

桃太郎と豪毅とナーナ。彼らはそれぞれの道を歩み始めていた。

男塾を卒業した桃太郎は東大へ進学した。将来的には父親の跡を継ぐつもりだ。
今は実家から大学へと通学している。

その日はいつものように家を出た。駅までの道を歩いていると、見知った、懐かしい人を見つけた。
「ナーナ……か?」
「え?……桃!?」
それは数年ぶりの再会だった。
「ナーナの子か?」
ナーナの隣には小さな男の子がいる。しっかりと手を繋いでいた。
「ええ、息子よ。さあなおき、お兄さんにご挨拶しなさい」
「はい。とうどうなおきです」
ペコりと頭を下げる男の子。くるんと一回転した揉み上げに、ある男の顔が浮かんだ。
それはよく知った男。
「俺は桃太郎だ」
「ももたろうってあのおにたいじのももたろう?」
「フフッそうだぜ」
なおきは桃太郎に興味津々だった。

近くのカフェに移動し昔話に花を咲かせる。
「今里帰り中なのよ」
「それにしても子供がいるなんてな。ビックリだぜ」
世間ではまだ若輩と呼ばれる年令である。
男塾を卒業して大学に入りさあこれからだという時に、再会した幼なじみは既に母親になっていた。
「まさかこんなに早く母親になるなんて思わなかったけどね」
妊娠の判明は、天挑五輪大武會の数ヶ月後。
初めて結ばれた二人に、それはすぐやって来た。
さらに桃太郎が驚いたのは、ナーナは現在二人目を妊娠しているという事。
「実家なんかあれだけ腫れ物扱いしてたのに、孫が出来た途端に掌を返したように擦り寄ってくるのよ」
そう言って笑うナーナは、確かに母親の顔をしていた。
「そう言えば『とうどう』って言ってたが、もしかして藤堂豪毅なのか?」
一番気にかかったナーナの相手の名前を桃太郎は訊く。
「ええ、藤堂豪毅さんが私の旦那様です」
ナーナは桃太郎と別れた後豪毅とお見合いをし、天挑五輪大武會の後に結婚したと話す。
「そうか、豪毅か」
豪毅の人となりについて、桃太郎はよく知っていた。
男塾の悲願の為に刃を交え、後に塾生として絆を深めた誇り高き男。
藤堂豪毅ならば安心だ。
「桃も家を継ぐのでしょう?」
「ああ。父の跡を継ぐ」
桃太郎の父親は剣情太郎という政治家で、江田島平八らと戦後の日本を形作った男であった。
「応援するね」
「がんばれももたろう!!」
「ああ。鬼退治がんばるぞ」
楽しそうな笑い声が辺りに響き渡った。

それから幾重にも季節が巡り────。

剣桃太郎は順調に政治家としを重ね、遂に総理大臣になった。日本初の武闘派総理として、政界に新しい風を吹き込んでいる。

藤堂豪毅は兵衛の跡を継ぎ、藤堂財閥の総帥になり毎朝新聞社を主催して、世界を動している。また桃太郎との交流はその後も続いていた。

私生活ではナーナとの間に二男一女をもうけた。

長男直毅はハーバード大を卒業し父親の片腕として働いている。
次男の豪次はオックスフォード大に留学中。

そして長女の奈々は────。

「助けて────っ!!」
「ん?」
突如聴こえた女性の叫び声に獅子丸は視線を動かす。
そこには体格のがっちりとした黒服の男達に囲まれた女性がいた。
「おい!嫌がってんじゃねぇか!!」
その場に近づいた獅子丸は、女性に手をかけている黒服の男の肩に手を置く。
「何だ貴様!?」
「兄ちゃん怪我したいのかい?」
黒服の男達が獅子丸を囲み、そして一斉に動き出した。


運命の悪戯か、必然の理か。


────二人は、出会う。

血統と縁が結ぶ赤い糸

■ FIN. ■

不知夜月