【1.プロローグ 三島財閥頭首】
街角の街頭ヴィジョンに映しだされた映像にナーナは息を呑んだ。
『……ここに三島財閥は世界に対して宣戦布告を行うと共に……』
街頭ヴィジョンに映っているのは間違いなく“彼”だった。
三島財閥の頭首が最近代替わりしたと聞いていたが、まさか彼が頭首になっていたとは。
「仁……」
あの日突然姿を消した彼。
所在が知れた事の喜びと共に、別人のような雰囲気を醸し出している仁。胸がキュッと苦しくなる。
高専4年の夏。
誰にも何も告げず彼は居なくなった。
風間仁と七瀬ナーナは三島高専時代の同級生であり恋人同士だった。
それから月日は流れ2年。
それは突然訪れた。
『……圧倒的な力で全てを終わらせる』
淡々と語られる仁の演説に、彼から目が離せないでいた。
仁は世界の三島財閥の頭首になっていて、全世界を相手に戦争を起こそうとしているのだ。
自然と平和を好んでいた穏やかだった仁。彼を争いに駆り立てるのは何か?
今のナーナに仁の真意を知ることは出来ない。けれども仁のこと、何かしら理由はあるはず。
(仁?私はあなたを信じている)
街頭ヴィジョンに映っている彼はもう違う世界の住人。
会う事はきっとないだろう━━━━。
元気そうな仁の姿に安堵したナーナ。住む世界が違う二人だから、彼との思い出は綺麗なままで心の奥底にそっとしまった。
三島財閥国連本部占拠。
三島財閥EU連合軍撃破。
日に日に轟く三島財閥の悪名。
『三島財閥』という名を聞く度にナーナの胸は傷んだ。
不知夜月