【2.再会は突然に】
一台の車が停車したかと思うと、ドアが開きコート姿の男が慌てたように出てくる。
男は薄暗い公園の中に消えて行った。
「おとなしくしろ!!」
「!!?」
首筋に突き付けられたナイフ。恐怖に抵抗することも声を出して助けを呼ぶこともできない。
普段はいくら近道でも通らない深夜の公園。早く帰りたくてつい使ってしまった。
薄暗い公園の中を足早に通り抜けていたが、突然背後から現れた男にナイフを突き付けられ捕まってしまう。
男はナーナを公園の一角にある薄暗い茂みの中に連れ込み押し倒した。
「……声を出すなよ」
舌なめずりしながら馬乗りになった男は、持っていた縄でナーナの両手を縛り身動きを取れなくする。
「ヒッヒッヒッ……あんたいい匂いがするなあ」
男の顔が首筋に寄せられる。次の瞬間ザラリとした感触が首筋に走った。
「ん、ん━━━━っ!!」
気持ち悪くて身体中に鳥肌が立つ。抵抗したくても縛られ自由にならない身体。ちらつかせられるナイフに何もする事が出来なかった。
男は怯え震えるナーナの姿に興奮していた。
たくしあげられるスカート。ストッキングは破られ下着がずり下げられる。ゴツゴツとした手が内股を這い回り、どうする事も出来ずナーナは男に犯されようとしていた。
ザザザザザ━━━━━ッ。
風もないのに草が揺れたかと思うと不意に身体が軽くなる。視界に入ってきたのはロングコート。
「うっ……!!」
次の瞬間呻き声と共に男の身体が地面に倒れ込んでいた。
「大丈夫か!?」
ロングコートの男は傍らにひざまずきナーナを優しく抱き起こす。それから手首を拘束していたロープが外された。
ナーナは乱れた衣服を整えようとするが、恐怖に震える身体は言うことをきかなかった。
「あ……」
そっと身体にかけられた男物のコート。驚いて顔を上げるナーナ。
「ありがとう……ございます……」
未だ恐怖に震える身体は言葉すら上手く紡げない。
「まさか?」
男の声が上擦った。
「……ナーナか?」
「え?」
薄暗い茂みの中見交わした顔は懐かしい顔だった。
そこだけ時が止まったように見つめ合ったまま動かない二人。
「何故だ……」
何と言う偶然なのか、運命の悪戯だろうか?
出会ってしまった二人はただ戸惑っていた。
やがて警察が来て男は逮捕される。ナーナも被害者として同行を求められたが、恐怖に思考が回らない。
「彼女は恐怖で精神的に参っています。今は一刻も早く休ませて落ち着かせることが一番だと思われます」
仁が警察との間に入り、後日警察署に出向くと言うことで話しをつけてくれた。
「迷惑かけて、ごめんなさい……」
「構わないさ」
車に戻りナーナを後部座席に座らせると、自分もその隣に座った。
「仁?」
「待たせてすまないニーナ」
運転席に座っていたニーナと呼ばれた金髪の女性は、様々な事象から状況を全て理解していたので特に何も言わない。
「どうするの?」
「一先ず本社ビルに向かってくれ。今彼女を一人には出来ない」
だが仁の本社ビル言った言葉に、ニーナは表情を曇らせた。
「……」
「ニーナの言いたい事は分かるが、ナーナは俺の昔の……知り合いだ」
「……」
無言のうちに車が静かに発進される。これは彼女の了承の返事だろうと理解した仁は、ふうと息を吐く。それから隣に座っているナーナをそっと抱き寄せた。
「もう大丈夫だからな」
まだ収まらないのかナーナは身体を震わせていた。
「……じ……ん……!」
仁に抱き寄せられ安心したのか、堪えてたものを吐き出すようにナーナは泣き出す。
「うわあぁぁぁ!!」
「ナーナ……」
まさかこんな形でナーナと再会するとは、誰が予想していたのだろうか?
仁は複雑な想いを抱えながら、ナーナが落ち着くまでずっと抱きしめていた。
不知夜月