【14. 不安な心】
数週間前ナーナはヴァイオレット社を惜しまれつつ退職した。
ヴァイオレット社と三島財閥という二足の草鞋は、時間が経つにつれナーナの心に重くのしかかる。
(私ずっとこのままでいいのかな?きちんとけじめをつけなくちゃ)
日々かられる思いにナーナは決心した。
「事情が事情だったから、ナーナくんが気にする必要はないのだが……」
社長の李超狼はナーナを引き止める。いずれこうなる事は予想していた。だが、彼にとって彼女の能力は惜しむべきものだった。
ナーナは正直な気持ちを話し出す。李はそれを黙って聞いていた。
「ですから、気にするなと言われても、これ以上社長の優しさに甘えるのが心苦しくなり……」
一度きちんとけじめをつけたいとナーナは李に頭を下げ、彼は彼女の気持ちを尊重したのだ。
ヴァイオレット社を退職し、三島財閥の完全な庇護下に入ったナーナ。今までのように隙がないのか、G社はナーナに手出しをする事が出来ず、穏やかな日常を過ごしていた。
そんな折、ナーナの元にヴァイオレット社の元同僚の速水茉巳から一本の電話が掛かってくる。
それはナーナの送別会をごく親しい人達でやりたいという内容だった。
「行きたいんだけど、駄目かな?」
「……」
ナーナが行きたいと望むならば、仁には反対する理由はなかった。G社との争いも今は落ち着いている。
だがナーナの口から伝えられた日にちに、仁は軽い違和感を覚えた。何故ならその日から仁は出張で2日程帰って来ないのだ。
━━━━偶然なのか、それとも……。
「じ、仁?」
いくら落ち着いているからといっても、仁がいない日だ。長考している仁の様子にナーナは送別会への出席は無理だろうとあきらめていた。
「ナーナ……」
しばらくの沈黙の後、仁が口を開いた。
「はい」
「本当は反対したいのだが、せっかくの誘いだ。行って来い」
発せられた仁の言葉に、ナーナの表情が喜びにかわる。
「ほんとに!?」
「ああ」
「ありがとう仁!」
ナーナは嬉しくて仁に飛びついた。
「だが念のため護衛はつけるからな」
ナーナを抱きしめながら、仁は漠然とした不安を拭えずにいた。
不知夜月