【8.アキレス腱】
白い高級そうな皮張りのソファーに座り、男はモニターを見つめていた。
「大ニュースよ!一八、聞いて頂戴!」
深紅のチャイナドレスに身を包んだ官能的な女性が男の部屋に入って来る。
そこはG社本社ビル最上階の部屋。G社の実質的な支配者である三島一八の執務室だった。
「……大ニュース?」
一八と呼ばれた男はモニターから視線を外し女を見る。すると彼女から一枚の紙が手渡された。
「アンナ、何だこれは?」
それはある女性に関しての調査書だった。聞いた事のない名前に見た事のない女性だ。
目鼻立ちが整った黒髪の女性は多少あどけなさが残るが、清楚なイメージを受ける。
「うふふふ……。その子はあなたの息子、三島財閥頭首風間仁の彼女なのよ」
アンナは一八の向かい側のソファーに座り脚を組む。深紅のチャイナドレスの長いスリットの脇から薔薇柄の網タイツに包まれた太股が覗く。
「仁の?」
一八は以外そうな表情で再び調査書を見直した。
「名前は七瀬ナーナ、21才。5年前に二親共に事故死。三島高専卒業後、ヴァイオレット社に就職。現在総務部に所属。風間仁とは高専時代のクラスメイト……ざっとこんなものかしらね?」
アンナは一通り読み上げると、持っていた調査書を机に置いた。
「……」
「この子の家から風間仁が出て来るのを、バッチリ見ちゃったのよ」
アンナは更に数枚の写真を机の上に置く。それは仁と彼女が写っている写真だった。
「風間仁を穴蔵からおびきだすエサにでも何にでも使えるわ」
アンナは微笑む。
「奴のアキレス腱か……」
一八の深紅の左目が妖しく光るのをアンナは見逃さなかった。
不知夜月