キスが止まらないカラ松



時々、ほろ酔いで夜に訪ねて来るようになったカラ松くんは今日も機嫌良さそうにハグをしてきた。どうやら一人で飲むと私の家に来たがるらしい。兄弟の面倒を見る必要がないからか、この前皆で屋台に行った時よりずっと酔っている。私に促されるまま水を飲んでお風呂に入って、歯磨きまで終えたカラ松くんは寒いからと私の布団に潜り込んできている。素面じゃ絶対できないだろうに。


「あ〜、ぬくぬくだなぁ」


布団を半分占領するカラ松くんは私の腰を抱きつつ満足げにそう言う。あまりにも幸せそうに笑うものだから、私までつられてしまった。かわいい。成人した普段はイタい男であるのに。かわいい。


「結構飲んだね。カラ松くん、まだ酔ってる」
「酒くさいか?」
「ちょっと」
「んー、花厳、キス」


キスって。脈絡がないし、キスって。おねだりするように唇を尖らせるカラ松くん。もうどうしよう。かわいい。つんとしたそれにそっと唇を重ねると意外と温かかった。


「おやすみのチューか?」
「かっ………おやすみのチューです。おやすんで下さい」
「まだ!ぜんっぜん!いつもよりおやすみのチューが足りない!」
「いやいつもしてないし……何言ってるのカラ松くん」
「せっかくハニーの家にいるんだ、もうちょっとチューしたい」


「なあ?」と今度はカラ松くんの方からのおやすみのチューである。はいはい、もう遅いし寝よう、そう言おうと思ったら再び唇が重なった。カラ松くんの鼻先が頬に当たる。満足したかな、と目を開けるとぬるりと舌が入ってきた。


「ん!」


私の腰を抱く腕を掴み抗議してもびくともしない。力持ちめ。その間にも、カラ松くんの舌は私の舌を絡めて愛撫してくる。アルコールの入ったカラ松くんの体温は同じ布団に入る必要がないくらい熱い。ちゅ、と吸いながらやっと離れたカラ松くんの唇は呼吸をするとすぐ私の唇を塞ぐ。まだするんだろうか。いっそ、カラ松くんの気の済むまま委ねようか。力を抜いた私に気を良くしたのか、カラ松くんの手の平が私の背中を撫でた。


「ふっ……ふ、ぅ」


舌先が上あごを擽ってくる。苦しくなってきて口を更に開けると一瞬離れて、また戻ってきた。お酒のにおいに当てられたからか、体が火照ってくる。温かい。というか、熱い。丸い舌先に舐られて思考が溶かされていく。一度引き抜かれてまた滑り込んできたそれにうなじがぞわりとした。深く追ってくるカラ松くんの前髪が私の額を滑る。角度を変えながら求めてくるカラ松くんにお腹がぎゅうっと疼いた。知らないその感覚に厚い胸板に縋るとその手を取られた。


「んん、んっ……!」


ぐい、と両手を布団に縫い付けられる。枕とカラ松くんに挟まれて顔も動かせない。ちょっと待ってもらおうと思って身じろぐと膝で両脚を割られた。


「ん、むっ、むぅ……!ふっ、ふぅ、っ」


抗議の言葉も舌と一緒に吸い上げられる。舌にカラ松くんの歯が触れて、切れてしまいそうで怖くなる。それを解すようにまた厚い舌が入ってきて私の舌の根を柔らかく嬲った。唇も歯も舌もべろりと舐められ吸われて、ぢゅう、と音が鳴る。
苦しい。カラ松くん、苦しい。流れ込んでくる唾液を懸命に飲み込もうとしても追いつかない。じわじわと汗が滲んできて、涙が目尻から零れた。唇が重なった隙間から酸素を求めるとカラ松くんがそれさえも塞いでしまう。食べられてる。そんな気がして必死に動いても逃がしてくれない。時折漏れるカラ松くんの息が荒くて、本当に捕食されてるような気分になって体が震えた。


「か、はぅ、らま、っんん……ッ、ゃ、やら」
「ん……、っんん」
「ふ、っ……ひ、んっ、からまつくっ、んんぅっ」


舌を動かそうとしてもカラ松くんは許してくれない。カラ松くんの脚が私の脚を押さえ、のしかかってきた。固い筋肉が押し潰してくるものだから苦しくて堪らない。びくびくと無意識に痺れる体を感じ取ったのか、ずるりと舌が引き抜かれた。


「ひぁ、あ……っ」


いつの間にか開かされていた脚の合間に、カラ松くんの腰がぐいっと擦り付けられて高い声が出た。何、これ。背筋の震えを堪えながら見上げたカラ松くんは、酔いを感じさせないくらい真剣でギラギラとした眼差しだった。つう、と伸びた糸を見てまた唇を落とされる。今度はすぐ離れて、またくっついて。先程とは違う可愛らしい音を立て、私の顎に伝った唾液を舐め取りながら首筋に吸い付かれた。はあはあと、私のみならずカラ松くんの肩まで上下している。小さな痛みが何度か与えられ、それが鎖骨までくるとカラ松くんの頭がことりと下がった。


「………え」
「…………」
「…………寝てる」


私の胸に顔を埋めて寝息を立てるカラ松くんに、さすがに怒りを覚えないでもなかったがとにかく、今は眠ってしまいたかった。



―――



あれだけ飲んだのに目覚めはとても心地好かった。柔らかくて温かくて擦り寄ったものの気持ち良さにまた微睡む。
―――何か、すごい夢を見た気がする。
どんな内容だったっけ、と薄く目を開けると目の前におっぱいがあった。


「ぬぉ、!!」


開けたパジャマから覗く谷間は寝起き一発目に見るものとしてはあまりに衝撃的で飛び起きようとして、自分の腕や脚が彼女に絡んでいる事に気付いて更に声を上げる。
花厳だ。間違いなく花厳を抱き絡んで寝ていたらしい。えっえっ、と一人で狼狽していると彼女の白い肌に赤い痕が残っている事に気付いた。一つ、二つ……三つ。首筋と胸元に、キスの痕。
いやいやいやいや!!え!?嘘だろ、えっ、えっ!?
思わず自分の股間を押さえる。違和感は―――ない。いや、朝勃ちというか半勃ちしてしまってはいるが、いつものように、昨夜何かがあったような感覚はない。昨日花厳の家を訪ねた所までは記憶にあるが―――そういえば夢で花厳にひたすらキスをしたような―――。


「えええええ!?」
「………んん……?」
「あっ、え……!あああか、花厳……」
「何……どうしたのカラ松くん……」


寝ぼけ眼で枕に顔を押し付ける花厳。……可愛い。いや、今はそれよりも。


「あああああの、あの、花厳、ええと、花厳?」
「ん」
「俺、えと、俺達、昨日………」


言い淀んでいると、枕に顔を押し付ける花厳の耳が赤くなった。ええ!マジか!?そういう事か!?じろりと見上げてくる瞳がほんのり怒りを孕んでいて、それがまた、可愛い。


「………覚えてない?」
「えっ、いや!ええと……」
「カラ松くん、酔ってて、おやすみのチューをしました」


おやすみのチューって何だ。くっそ可愛い。


「…………以上です」
「え……以上?その、おやすみのチューだけ?」
「うん」
「あ、そう……」
「でも」
「ん?」
「死んじゃう、って……思った……」


ぎゅうっと枕に強く顔を埋めた花厳の耳が更に赤くなったのにつられて顔が熱くなってきた。死んじゃうって、どういう意味だ。


「……酔ったカラ松くんとはもうおやすみのチューはしません」
「ええ!」
「苦しかったので」
「まっ、俺、一体何をどうして」
「………おやすみ!!」
「ちょっ、え!?花厳ー!?」




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