ほろ酔い



乾杯を終えて焼き鳥を頬張る。ビールで流し込むと何とも堪らないくらい美味しくて、ぷはっと声を出すと高田が笑った。

「珍しいですね花厳さんから誘ってくるなんて」
「たまにはねー。小百合ちゃん、サラダ頼んだよ!」
「わー!食べましょ」
「マサル、お酒ばっかりじゃなくて野菜とお肉たくさん食べな?おっきくなりな?」
「うっす!生追加でー!」

言ったそばからお前。楽しそうなマサルの横顔を見るとそんなのどうでもよくなってくる。

「何かあったか?」

隣に座る加納がぼそりと呟いた。さすが幼馴染み、隠し事は難しいね。

「皆の顔見たくなって」
「毎日嫌っつーほど見てるだろ」
「全員揃うのって朝くらいじゃん。時々ワイワイしたくなるでしょ」
「まあ、嫌じゃないがな」
「麻里ちゃん元気にしてる?」
「ああ」

聞けばこの間映画を観に行ったのだとか。え、加納って何観るの?恋愛映画?麻里ちゃんの趣味?さすが、加納は彼女大事にするもんね。つくねの甘いタレに舌鼓を打つ。美味しい。

「おー、生二つ追加で!」
「おう、やってンな」
「! お疲れ様です社長、柄崎さん」

隣にいた高田が席を空ける。隣に社長と柄崎が腰かけた。すぐさまやってきたビールジョッキに全員が再び乾杯をする。

「お疲れ」
「お疲れ様でーす!」
「お疲れっす」
「お疲れ様です」

ジョッキを煽った社長のビールがみるみる減っていく。柄崎がすぐさまおかわりを注文した。嫁かお前は。

「口、ついてる」
「あ。どうも」

社長に指摘されて口の端についていたらしいタレを舐めとる。昼間の事が思い出されてほんの少し溜め息がこぼれた。嫌ではなかったけれど、何だろうな。ヒリッとした感覚が胸のどこかにある。目の前の光景がいつまでも続かないのかもしれないなんてそんなの。ねえ?滑皮。
そういう事の覚悟だなんてそりゃ、したくはないよ。
いつまでも続いてほしいと思うくらいはいいでしょ。



「だからさぁ、吐くほど飲むのやめなぁ?柄崎〜」
「ああー?」
「柄崎さん、重いです」
「じゃあ私、帰りますね〜」
「小百合ちゃん一人で大丈夫?」
「どうせタクシーですから!じゃあ皆さんおやすみなさーい」
「社長は代行呼びました?」
「おう。高田、マサル。柄崎とタクシー乗って帰れるな。加納もまた明日」
「はい」
「行くぞ花厳」

おお。はい。

「じゃあまた明日〜、おやすみ〜」

手を振ると高田が振り替えしてくれた。マジイケメン。
社長の車の後部座席に乗り込むと社長も隣に座った。代行の人が運転を始める。街の明かりが眩しくて目を細める。社長の顔は逆行で見えない。それでもこちらを気にしてくれているのはわかって、社長、と呼ぶと頷く。

「ちょっと寝ていいですか?」
「ああ。起こす」

丑嶋、好き。微睡みながら呟いた言葉が現実か夢の中か、判別しようがなかった。




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