サバゲー



「おう、中々良いんじゃねーか!?」
「そっスか」

満足げな滑皮に、露骨に嫌な態度をとってしまったが致し方ない。だぼっとした迷彩柄の服は滑皮直々に借りたものである。袖と裾を捲らないとどうしようもなかった。ベルトを限界まで絞ってやっとズボンはずり落ちずに腰で留まっている。「目ェ潰れるかもしれねーからお前はゴーグルつけとけ」なんて言われて一生外さない事を誓った次第だ。

「で、何で戌亥がいるわけ?」
「それはこっちの台詞だよ花厳ちゃん……」

戌亥もまた私と同様に迷彩柄の服を纏い、手にはグローブまでつけている。お互いの装いで"滑皮に拉致られたんだな"という認識で一致した。山根古組とかいう、あっちもヤクザだそうだが、対決するんだそうだ。サバゲーで。ヤクザ同士が。怖。それ実戦意識してるよね。抗争じゃん。滑皮の方は頭数が足らなかったそうで打診されすぐに断ったものの車に押し込まれる形でこんな山奥まで連れてこられてしまった。拉致そのものである。
あちらの山根古組サイドは木に向かって試し撃ちをしている。ピリピリとした空気に帰りたくなった。

「花厳。お前はこれ持て」
「結構です」
「女でも扱いやすい筈だ。撃ってみろ」

実践の話?聞かないのは梶尾さんと鳶田さんが相変わらずの威圧感で見下ろしてくるからである。エアガンを持つのすら初めての私が撃てると思ってんのか。狙ってみろ、と言われた木に掠りもしない。ですよねー!いっそ戦力外通告してほしい。

「テメェ舐めてンのか?腰が引けてンだよ」
「引けるよだって撃つ相手もヤクザでしょ!」
「ここでの遺恨は残さねェ決まりだ。安心して撃て」
「撃てるか!」
「チッ、いいか。まずこうやるンだよ」

滑皮が私の手ごと銃を掴み、背後に回る。背中にピッタリとくっつかれお腹を引き寄せられた。

「背筋伸ばせ。銃口と目線を合わせろ」
「本物の指導受けたくない!」
「ヤらなきゃヤられンだぞ甘ったれンな!木の溝があるな?あそこを狙え」

こめかみに少し屈んだ滑皮の顎が当たる。戌亥の方を見るととても気の毒そうな顔をしてこちらを見守っている。くっそ。滑皮の腕によって固定された銃口が真っ直ぐ木の溝を向いた。ええい。パンッ。

「あ。当たった」
「この感覚忘れるンじゃねーぞ」
「はいはい……どさくさに紛れて今お腹の感触確かめてませんでした?」
「俺がそんなセコいことするような男だってのか?もうちょっと鍛えとけ細すぎる」

触ってんじゃん!!怒りたいけれど舎弟二人が怖すぎる。帰りたい。社長達に会いたい。

「そろそろ時間だ。ついてこい」

滑皮に梶尾さんと鳶田さんが続くので戌亥と顔を見合わせて足を進める。何故かピッタリの靴を用意されていたので山道でも歩きやすい。

「いいか、狙いを定めない内はトリガーに触るな。撃たれたらすぐ死体ロクになれ」
「言い方やめて?」
「戦場では男も女も、カタギも筋者もねェ。ヤるかヤられるかだ。気合い入れろよ!」

滑皮の顔も鳶田さんと梶尾さんの顔もマジである。




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