依頼



<ーーー今日午後5時すぎ、雷雨激しい調味市の空にて怪奇現象が起きたとの目撃情報が相次いで寄せられております。こちらが、近隣住民が撮影したとされる問題の永続です。飛び交う隕石群の中にはヒトのようなものも見え、未だ被害者の特定及び安否が不明のままですーーー>



「モブ君なら今は部活中よ」

肉体改造部と書かれた部室の中。お目当ての人物は部活中ーーーという事は、目の前にいる彼女達は一体何者なのだろう。お茶とお菓子を囲んでいる。休憩中だろうかと首を傾げた花厳にお茶が差し出された。

「まあ、モブ君ならその内戻って来ると思うから待ってるといいわ」
「こんにちは!部長さん?ですか?」
「肉体改造部の?違うわよ。脳感電波部の部長、暗田トメよ」
「のうかんでんぱぶ?」
「部長、もう廃部になりました」

肉体改造部よりも不思議な響きだ。少なくとも肉体改造部の部長ではないらしい彼女は煎餅も勧めてくる。一口齧ると香ばしい香りのそれを齧ると甘い醤油の風味が口の中に広がった。時刻は15時50分。部活動が始まって三十分も経っていない。急いではないけれど、いつまで待てばいいのだろうーーー花厳がそんなことを考えていると部室の戸が開かれた。

「あ。来たわ」
「ん?お客さんか?」

およそ中学生とは思えない逞しい体躯に滴る汗が眩しい。雄々しい顔つきの少年、とは言い難い風貌の彼ではない。彼の肩に担がれ、まるで収穫されたばかりの昆布のようになっている少年こそ探していた人物だと直感的にわかった。床にそっと横たえられた少年は顔面からだらだらと体液を流しながら這いつくばっている。そんな状態の彼に今お願いするのは少し、可哀想かなと花厳は思う。

「君がモブ君?」
「え……は、はい」
「君に相談したいことがあって、ちょっといいかな?でももう少し休んでからで」

こくん、と小さく頷いた茂夫はきっと気付いただろう。花厳が超能力者だということに。


▼▼▼


"霊とか相談所"。何とも胡散臭い看板を掲げるその場所は茂夫のアルバイト先であり修行先でもある。案内されたオフィスはデスクと応接間が一体となった小さな空間だ。デスクに座る青年の顔と壁に貼られたポスターの顔が一致している。"21世紀の新星 霊幻 新隆"と書いている。

「師匠、お客さんです」
「おう。ん?お前と同じ中学の子か?」
「はい。隣のクラスに転入してきた……」
「御笠守 花厳です。こんにちは!」
「こんにちは。モブ、お茶お出しして」

「とりあえずどうぞ」、と促されるまま革張りのソファに腰かける。茂夫が給湯室に入ったのを尻目に霊幻が口を開いた。

「どのようなご依頼で?」
「幽霊を捜してます」
「捜してるって、幽霊はその辺にうようよいるもんだからなぁ」
「ええと、ある幽霊を捜していて。もし見かけたら教えてほしいんです」
「特定の幽霊を捜しているって事か」

ローテーブルにお茶が注がれた湯呑みが置かれ、茂夫が霊幻の隣に立つ。

「捜してほしい、じゃなくて見かけたら教えてほしいってのはどうしてだ?」
「ずっと捜してるんですけれど見つからなくて」
「……その幽霊って知り合い?」
「お父さんです」

霊幻と茂夫の表情が少し固くなったのを気にも留めずに花厳はお茶を啜る。霊幻の指がソファを二度叩き、んん、と咳払いをした。

「降霊術とかもできなくはないんだけど……」
「多分来てくれないと思います」
「どうして?」
「お父さんがいなくなったのを見たんです。だからどこかにはいるんだけどどこなのかわからない。でも、その、あんまりお金がないのでもし見かけたら教えてほしくて。だめですか?」
「ああ、いや料金は見つかった後でいいしこういう場合は日数とか考慮しなくていい。通常通りのコース料金で大丈夫。延長料とかも何も加算しないから安心してくれ」

ちなみに料金表、と差し出された紙には確かにコース別の料金が書かれている。思ったよりもずっと良心的な料金だった。

「あともう一つお願いがあるんです」
「ん?」
「お父さんを見つけるまでお手伝いさせてもらえませんか?幽霊の相談がくるってモブ君から聞きました。私だけで捜すよりお父さんに会えるかもしれなくて」
「一応尋ねたいんだけど、君霊感ある?」
「はい!」
「除霊とかできる?」
「師匠、彼女は僕と同じです」
「同じ?」
「超能力者です」

こうして花厳は霊とか相談所に、茂夫と同じ賃金でヘルプとして雇われる事になったのである。




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