煌々



色素の薄い髪が目の前にあるもんだから気になってしょうがない。前の席に座る男は何の因果か一年生の頃も前の席に座っていた。席替えをしても何故か私の前方のどこかにはいる。目の前か斜めか。視界のどこかに花沢輝気。外見だけならまだしもというか外見が良いものだから周囲にちやほやされるのが当然とでもいうように奴の周囲には人が多くなる。その分騒がしくなるのも必然で、とにかく視界がうるさいのだ。二年目になっても慣れない。成績優秀でスポーツ万能。眉目秀麗。そういうやつが注目されるのは必然ではある。それは別にどうでもいい。妙に鼻につくのはこいつが自分の才覚を自覚している上で他人を見下しているのが言動の端々で滲んでいるのだ。女子や取り巻きには表面上は友好的に、その他には表面上も取り繕わない。当時二年生だった所謂今や番長と呼ばれる立場の人間が花沢にぺこぺこと頭を下げていたのは一年生の終わり頃だった。初めは席も近いのだから仲良くしようとは努めたが生来黄色い声というものは嫌いで、なんならこういうやつが嫌いだったのでその甘ったるい態度をはっきり「そういうの好きじゃないから」と伝えてしまえばこいつの私に向ける人当たりの良い笑みが無くなったのをきっかけに、私たちはそこそこ仲が悪くなったのかもしれなかった。
前後の席にも関わらず私達はこのクラスの誰よりも離れている。

「なんかまた他の学校の男子と喧嘩〜?ホント飽きないよね」
「またテル君に頼ったんでしょ」
「まあ、仕方ないからね」
「テル君強くてカッコいい〜」

日頃の行いが祟って女子からは距離を置かれていてもこういう噂はよく耳にした。番長同士で喧嘩だ。謂わば縄張り争いだ。中学で縄張りを争って一体どうするのかは知らないがここ調味市の各中学校にはそれぞれ番長がいる。治安悪すぎか。黒酢中は三年の枝野だが、番長でどうしようもない時にかりだされるのが裏番と呼ばれる存在、花沢輝気だ。あの外見からは想像できない程強いのだとか。何でもこなしてしまうから尚更質が悪い。
得意気に前髪を弄る姿が心底目障りで窓の外を眺めるとすっきりしない曇天だった。お前もか。




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