1_違わない約束

 小さい頃、私は親の転勤で色々な場所を転々としていた。生まれた場所や過ごした場所は沢山ありすぎて今ある記憶が何回目の引っ越し先での思い出か分からないほど。初めは点呼先でも友達が沢山出来て毎日遊ぶことが多かったけど、友達が出来ても数ヶ月後にはすぐに引っ越してしまうから手紙交換も数回の往復だけで段々疎遠になってしまった。
それが五回も続くと、もう友達が出来たって結局離れて忘れられてしまうんだと諦めるようになり、六回目の転校先では自己紹介も簡素に、特に友達と交流もすることなく毎日を過ごすことにした。

 よく呼ばれていたあだ名をこの学校で呼ぶ友達もいなく、皆揃って私のことを「転校生」と呼ぶ。壁を作ったのは私からだったけど、彼らが私のことを「転校生」と呼ぶ度に溝は深まるように感じてしまう。だから余計、学校では大人しく何も話さなくなり放課後になれば脇目も振らずに自宅へと帰るようになってしまった。

「蛍ちゃん、お友達と遊んで来てもいいのよ?」
「……うん、また今度ね」

 一ヶ月もその状況が続けば親も心配したらしく、夕食時に度々このような話題を振られるようになってしまう。正直、「どうせ転校するから友達が出来ても無駄でしょ」とは思ったが、さすがに空気を読み当たり障りのない言葉を並べて、言いかけた言葉はお茶と共に喉へ流し込んだ。


  
back両手で掴んで
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