バカにつける個性



「あ!いた!!!」
「へ?!」

 市街地の端っこ。そこでようやく探していた電気系個性を持つ少年に出会った。
思ってたよりも声が出ていたようで、相手は私の突然の登場に驚いている様子であった。


「もしかして君の個性は電気系??」
「え、ああそうだけど……」
「やっと見つけた!あ、直守知結ってんだ、よろしく!」
「おお!よく分かんねえけど俺は上鳴電気だ!よろしくな直守!」

 グッと握手を交わす。
彼の傷を見つけて私は、チラッと腰にある人形をみた。よし、まだいける。


「あのさ、突然なんだけど」
「ん?なんだ?」
「怪我、治させてくれない?」

 ポカンとする上鳴くんに自身の個性について簡単に説明する。自分は【自己犠牲】の個性であるため、この受験では不利であること。また、人の傷を治すことで、多少だけど敵にダメージを与えることができるようになるということ。簡単な説明であったため色々と飛躍した話になってしまったけど、上鳴くんは二つ返事で了承してくれた。


「俺も治して貰えるのは助かるしいいぜ!」
「ありがとう!では早速」

 なんていい人なんだと両手を合わせてから個性を使う。傷の数は多いが、すべてかすり傷であったため、そこまで時間はかからなかった。
上鳴くんの傷が完全に癒え、目的がなくなってしまった私だったけど、上鳴くんがもうすこし敵を倒したいから一緒に行かないかと提案してくれた。私は即答で了承し、彼の後について行く。


「ここらへんは受験生少ないみたいでさ、俺の個性も使いやすいんだ」
「上鳴くんの個性って周りにも影響しそうだしね」
「その点、直守がいてくれたら心配ねーじゃん?助かるわ」
「いや、自分もモロに影響受けるんだけどね?!」



 フラフラ歩くもなかなか敵が出てこない。これは遭遇する前にタイムアップになる可能性が高いなー。どうせなら上鳴くんの持つ個性についても見ておきたい。
そんな事を呑気に考えてた時、不意に上鳴くんが私の方を向き、腕をとって引き寄せた。彼の胸に飛び込んだはいいものの、何が起こったのか分からなかった。ただ聞こえてくるのは、背後で上鳴くんが帯電させた声と爆発音だけ。


「わりぃ直守!」
「いや、全然!!むしろ助かった!」

 音が鳴り止み、振り返るとそこには1Pがいた。私はギリっと歯をくいしばる。
油断していたのだ、その証拠に上鳴くんに助けてもらっている。


「ごめん上鳴く……」
「いや……」

 ぐりん、と上鳴くんに向き直る。油断してたことを謝って、態勢を立て直して、自分も戦おうと思っていた。だが顔を合わせた瞬間2人とも硬直する。顔が、目と鼻の先にあった。上鳴くんよりも身長が小さい私は、すっぽり彼の胸に収まっており、見上げると丁度良いくらいの身長差が生まれていた。慌てて視線を逸らす上鳴くんと、茹でタコのように真っ赤になる私の顔。だめだ、こんな状況なれていない……!
上鳴くんの目の前にはまだ1Pがいる。邪魔にならないように急いで離れようとした時、突然視界に2Pが現れた。


「上鳴くんうしろに敵だ!」
「直守後ろ頼む!あと、ちょっと離れてくれ!」
「了解した!」

 私は上鳴から少し離れて、腰にある人形に触れた。
数体あるうちの、酷く汚れている人形を引きちぎり、自身の額に翳す。


「放電最大出力!」
「あわせみ!」



 両サイドから敵の倒れる音がする。手に持っていた人形に十字を切ってから上鳴くんへと向きを変える。彼も敵を倒したようで、それは黒焦げになっていた。なんて威力だ……これが電気系の個性。


「す、すごいや上鳴くん!君の個性に怖いものなんてないんじゃない?!」
「う、うェーーイ……」
「か、みなり……くん?」
「うぇー……い」

 あ、バカになってる。
もしかして、上鳴くんはキャパ超えたらショートしてバカになる……とか?
それからタイムアップの声がかかるまで、彼のバカをどうやったら治せるか自身の個性を駆使する羽目になった。


target:上鳴電気
(ごめん……助かった直守)

 
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