ブルータス、お前もか
今日はいつもより少し早く家を出た。真新しい制服に身を包み、意気揚々と道を歩く。
そう、本日は待ちに待った雄英の入学式なのです!
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私のクラスはA組だった。目の前にはドアがある。
このドアを開ければもう自分はヒーローの卵としてこれから精進する人生になるのだろう。どんな人たちがいるのだろうか、一息ついて、ドアをあける。
「(まだほとんど来てないのか)」
教室には生徒があまりいなかった。いるのは後ろの席でやたら興奮しながら何かを語っている少年たち。近くの席で静かに着席している、いかにも真面目そうな少年……あ、この人知ってるぞ 。
とりあえず、自分の席を探すために黒板に貼られた張り紙で名前を探す。その時ふと、聞き覚えのある声と内容が耳に入ってきた。
「でさ!急に腕掴まれたと思ったら、俺の傷を綺麗に治したんだ!」
「俺も俺も!こう、なんていうか心が洗われるような気分になってさ」
「治った瞬間のあいつの笑顔は反則だわ、あれ女だったら惚れてる」
「あいつ案外柔らかかった」
「なに?!お前なにしたん?!」
「(え、もしかしてこれ私のこと?)」
既視感ある話に、実技試験のことを思い出す。確かにあの時、腕の傷を治した。
事故だけど、相手の胸にダイブしてしまった。でも話の流れからして性別が違う……ような気がするんだけど?
ねぇ、それってもしかして私の話かな?って聞こうと振り向いた時、切島くんと目があった。切島くんは、私に背を向けていた上鳴くんの肩を叩き、ちょいちょいと指さす。
「あーーーー!」
「直守じゃんか!!」
声が大きい!教室中に2人の声が響く。
ほらほら、関係ない人たちまでこっち向いちゃったじゃないかよ。そんなことはお構いなしに、2人は私の元へと駆け寄る。
「直守も受かってたんだな!」
「同じクラスか!よろしくな!」
「よろしく」
2人して同時にニカっと笑うもんだから可笑しくてこっちまで頬が緩む。
そんな私の表情を見て2人は同時に顔を見合わせて頷き、先ほどまで座っていた所にいる、もう1人の少年を手招きした。
「瀬呂、瀬呂」
「ほれほれ瀬呂こっちだ」
「なんだよ、あ。俺は瀬呂範太な」
「私は直守知結、よろしく」
あ、この人もなんかいい人っぽい。さすがヒーロー科、いい人ばっかりじゃないか?
瀬呂くんとのやりとりを見終わった2人は、彼に「ほらな、言った通りだろ?」と私を指さす。
「笑ったら女みえてだろ??」
「これでも男なんだぜ!実技試験の時なんかほんと漢前だったぜ直守!」
「………………あぁ」
「どうしたんだよ!照れてんのか?そんなんで照れてたら女子にモテねぇぞ?」
「………………うん」
「大丈夫か直守?具合いでも悪いのか?」
「お、まさかもう女子にメアド聞かれたとかじゃ……?」
「いや、お前ら」
そうじゃねえだろ。と3人のやりとりを黙って見ていた瀬呂くんが口を挟む。
「どうみても直守、女だろ」
「「え」」
ちょいちょいと瀬呂くんが私の下半身を指さす。
上鳴くんと切島くんの視線が上から下にさがり……「「あ」」と声が重なった所でようやく口を開けた。
「お、お前らもかああああああああ」
target:瀬呂範太
(不憫そうな奴)
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