こんにちは転校生


ピンポーン


「椿……何だよそのふざけた格好は」
「あは、久々だから油断した〜」

 おッス、俺の名前は広末椿!健全な男子高校生!あ、いやふざけてねぇからね?
 俺は2年ぶりにこの町に帰ってきた。転校初日、古市貴之の家を訪ねると、貴之は久しぶりの挨拶よりも先にこのふざけた俺の服装についてツッこんでくる。相変わらずツッコミ業に徹してんのか〜?とヒラヒラと手を振って、事の経緯を話した。


「や、俺の祖父さんがヤクザだってことは覚えてるだろ?」
「ああ知ってる。ついでに15歳まで女装を貫き通せば継がなくてもいいって約束も聞いてた」

「そう!もう女装する必要ないんだけど、ほら俺めっちゃ似合ってるじゃん?どっからどう見ても女にしか見えないくらい」
「そうだな、女だと思って言い寄ってきた男どもを返り討ちにしてたのも覚えてる」

「さすが智将!でもさ、似合いすぎてもう家族が俺を娘扱いしてくんの!今度は女装しなきゃ祖父さんが家業継がす!なんて言い出してさ」
「それで女装?」

「ああ、あと起きたら男物の服全部燃やされてた」
「ご、ご愁傷さま」

 経緯を話し終えると静かに合掌をされてしまった。
うちの家系は基本祖父さんの一言ですべてが決まってしまうので下手なことが出来ないのだ。さっきも言った通り、女装を拒否なんてすればその日のうちに俺が組長になってしまう。
そうならないためにも女装を続けているんです、はい。決して性癖とかではない、似合うんだけども!
幼少期から現在まで続けていたことだから、もう慣れて感覚が麻痺してるのかもしれないなぁ。女装すること自体には抵抗がなくなってしまっているんだ。そう思いながら貴之と2人で転校先の石矢魔高校に向かう。
 面白いことに石矢魔高校に近づくにつれて人通りが少なくなり、逆に不良の数が増えていく。貴之に聞いたところ、ここは地元でも最悪のヤンキー高校らしい。
俺が知らないだけで、常識の通じない弱肉強食の世界だと聞かされ胸が躍った。まじか、そんな面白い学校があんの?


「ほんっとに不良しかいねーんだな貴之!」
「椿、目立ってる目立ってる」

 校門をくぐり、職員室へと向かう途中も不良不良不良!不良しかいない。奴らは俺たちを凝視して、なにやらひそひそと話しているようだった。
てっきり初っ端から絡まれて喧嘩でもすんのかと思ってたんだけども、奴らはそうはしなかった。
その理由を貴之に聞くと、俺を見てから青ざめた顔で「ああ、俺の平穏な高校生活が」と嘆かれてしまった。
 
 俺が職員室で事務的な手続きを行っている間、貴之はふらつきながらも男鹿を呼んでくるとどこかへ行ってしまった。あいつ大丈夫かよ。
あ、職員室で担任と思われる教師に「君本当に男の子?」と聞かれたのは言うまでもない。確認します??これでも立派な男の子です。
 手続きが終わって、俺の所属する教室までの地図を貰う。ホッチキスで止まっていた2枚目には、この学校全体の見取り図もついていた。なんで?と首をかしげていると教師はうつろな目で、出来る限り教室に行きたくないんだと言葉を漏らす。
……さすが不良高校、教師でさえも手に負えない野郎ばっかなのかよ。



(女がきた)


  
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