ぶっとべ彼方へ


「クク、面白れぇじゃねーか」

 女連れて下につきたいなんて。そう聞こえてきた。ああ、女って俺のことか、いや俺男なんですけれども、と言いたくてもこの状況じゃ話をややこしくするだけだから黙っておく。
ちらりと俺を見た貴之も口パクで「怒んなよ」と言っていたし、ここはしおらしく一歩下がって様子見でもしとこうかな。
 男鹿が一歩前へ出たことで、俺も教室に入ることができた。今から神崎とかいうボスの右腕(貴之曰く)の城山が男鹿と戦うらしい。これで男鹿が勝てば、俺らは下につく事が許されるようだ。城山が何か言い終わる前に男鹿がアゴに一発を食らわせる。


「いいだろう、ようこそ3-Aへ」

 神崎が椅子から立ち上がり拍手をして俺らを迎える。こんな簡単に終わってしまうなんて、案外こいつら大したことないんじゃないか?そう思っていると、倒れたはずの城山が起き上って、神崎に何かを伝えようとしていた。
お、男鹿の一撃をくらっときながら気絶しないなんて、実は強かったり?
神崎はそんな城山を見下ろし、数秒後、城山の顎を鋭い蹴りで一撃した。笑いながら用無し発言をする神崎に対して、男鹿はいい表情で「いーねっ」と言う。


「(男鹿よりもクソヤローだった)」
「待ってください神崎さん!その男は……その男は危険です!」

 神崎の足を捕まえ、這いずりながらも必死に男鹿の危険性を訴える城山は、ものすごく賢いと思う。だってこいつ赤ん坊を押し付けようとしてんだぜ?貴之もそう思うだろ?と横を見れば黙ってろと言わんばかりの表情で俺の口を押えてきた。
 そんな事をしてる間にも話は進んでいて、なんとか気力で立ち上がった城山に、あろうことか神崎は窓から飛び降りろと命令していた。なんて野郎だよ……周りがドン引きしているにも関わらず神崎は拍手を強要し、ついには男鹿に城山を投げ捨てろと言い放った。


「やっぱアンタじゃなかったわ」
「あ?」
「お前がとんでけ」

 次の瞬間、男鹿がとんでもなくいい笑顔で神崎をぶっ飛ばした。ぶっ飛ばされた神崎はそのまま窓を突き破って落ちていく。
まじか、まじでかと汗を流す男鹿と古市、それに神崎の手下どもがこぞって絶句する中、俺は手を叩いて大笑いし、男鹿の背にいた赤ん坊は目を輝かせて雄たけびをあげていた。


「あっはっはっは!男鹿最高!!」
「ダーヴー!!ウィ―――!」


(あははははげほげほげほあはっは)(笑いすぎだろ)


 
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