地球へやってきてスイは、ブルマに会いにカプセルコーポレーションへ来ていた。
「はい、スイさん」
ティーカップをテーブルに置く。
コーヒー特有のほろ苦い香りが鼻腔をくすぐる。
カップを鼻へ持っていき、香りをかぐ。
「やっぱり、素敵な香りですわね。こーひー、という飲み物は」
「コーヒーの良さが分かるなんてスイさん凄いわね。好き嫌い分かれやすいのよ、これ」
こんなに苦味があるのだ。ビルスは絶対に嫌いだろう。スイはそう考えながらコーヒーをすする。
「それで? 聞きたいことってなに?」
「あ……。ええと、あの、ですね?」
目をそよそよ泳がせ、頬は徐々に桃色へ変わる。
その様子をブルマはまるで年増のいかない少女のように感じた。
意を決した様子で、スイは口を開く。
「あのっ、ぷりん? の作り方、教えてくださいっ!」
「……え?」
あまりにも言いずらそうにしていた為、ビルスにも相談できないほどの深刻さなのかと思っていた。
呆気にとられた。
ブルマは「プリンねえ……」と、以前ビルスが地球へやってきた時のことを思い出す。
「じゃあ、レシピ書いてあげるわね」
「はいっ! ありがとうございますブルマさん!」
助かります……。スイは苦笑いをしつつ、必要な材料を確認する。
牛乳、卵、ゼラチン、砂糖。
スイは嬉々として材料を読み上げる。
少し前までは、庶民の常識のことなど何一つ知らないどこぞのお嬢様のように「それは何ですか?」と好奇心旺盛にブルマに質問していた。
今でも詳しくは知らないが、地球に深い興味をいだいたようで、ウイスに地球まで連れて行ってもらうことがある。
「なあに? ビルス様絡み?」
ブルマは、笑みを浮かべてスイを見る。
スイはたちまち頬を染めていく。
「違いますっ! と、言いたいのですけれど、その通りでして……」
なんでも、ブルマの誕生日パーティーのあの日に、ビルスが食べることのなかったプリンを作って食べさせてあげたい模様。
「あら。奥さんしてるのね〜愛する夫の為に」
「えっ!? も、もう……ブルマさんったら」
どくどく。
『奥さん』『愛する夫』。
どれも聞き慣れない言葉で心臓が騒がしい。
でも、
「そうですね。ビルス様の喜ぶお顔が、大好きですもの」
あの方のお側にいたい。いつまでも。
「……あら、ウイスさんにビルス様じゃないの」
「え、」
スイはゆっくりと、後ろを振り返る。
そこには頬を染めた夫と、付き人の姿。
「や、やだ。お二人とも、いつからそこに?」
「そうですねえ、ブルマさんがレシピを書き始めた頃ですかね」
「ほとんど最初からじゃないのっ! やーね」
ブルマはそう言うと自分のティーカップを手に持ち、奥へ消えていった。
「…………。ウイス」
「はい、なんでしょう」
「向こうに行ってろ」
ウイスはなにかを察した様子で「はいはい」とブルマの後を追った。
二人に、なった。
ふたりだけ。スイはそう意識すると、一気に体全体の熱が、頬に集まっていくような、そんな気がした。
「び、ビルス様……」
「……なに?」
「あの、どうして地球に……?」
ビルスは、視線をスイに向け、「帰るの、遅いんだよ」と一言。
「迎えに来ちゃったじゃないか」