ミアレシティを出発した私達はサトシの次のジムがあるショウヨウシティへ目指し5番道路を進んでいた。
途中、小さな林を進んでいると少し開けた所へ出た。
すると前を歩くサトシからぐぅっとお腹のなる音がして、少し照れながら頭をポリポリとかいてこっちを向いた。
「あはは、ごめん。」
「もうすぐお昼だし、ここで早めにランチにしない?」
『そうだね。ちょうどいいスペースもあるし、皆もお腹空いてると思うし』
「さんせーい!」
「じゃあ、ランチの準備をしましょう」
セレナがランチの提案をすると私は腰に付けたボールを撫でた。ボールはカタカタと揺れたから、この子達もきっとお腹空いてたんだろう。
サトシとセレナはテーブルのセッティング、ユリーカはポケモン達のお世話、私とシトロンは料理の担当で準備を進めていく。
私とシトロンはリュックから食材を取り出して、2人で協力して料理をし始めた。
「本当にナマエは手際がいいですね。ナマエが来てから調理時間がかなり短縮されてる気がします!」
『そんなことないよ。1人より2人の方が効率がいいからだよ』
ナチュラルにそう褒めてくれるのがなんだか恥ずかしくて手元が狂いそうになる。
そうこうしているうちに隣のシトロンはサンドイッチを完成させた。私が作ってるナポリタンもあとは盛り付けするだけになった。
「わぁー、美味しそう!早く食べよー!」
「そんな慌てなくてもご飯は逃げないよ」
『ふふ、そうだよ。ユリーカちゃん、そしたらみんなの分のお皿持ってきてくれる?』
「任せて!」
こうして私達は早めのランチをとることにした。
*
私達がゆっくりランチをしていると、急にポケモンたちがざわつき始めた。みんな辺りをキョロキョロ見回して何かを感じているよう。
すると茂みの方からガサガサと音がした。
「何かいるのかな?」
「ポケモンかも!」
『このあたりに危険なポケモンっていないよね…?』
目をキラキラさせるユリーカとは反対に私は少し不安になる。リングマとかスピアーとか危険なポケモンだったらかなりまずい。
そう考えているとケロマツが茂みへケロムースを飛ばした。ムースが直撃したのか、鳴き声がする。
「やっぱり何かいる!」
私達が茂みに近づくと、そこからポケモンが2匹飛び出してきた。顔にムースがついていてどうやら前が見えない様子だ。
「びっくりさせてごめんな?」
サトシはそう言うと片方のポケモンの顔に付いたムースを拭いてあげた。ユリーカも残りの1匹の顔を拭いてあげていた。
そんな2人の後ろから見つめるシトロンとセレナと私。
セレナはポケモン図鑑を取り出して茂みから出てきたポケモンへ向けた。
"ヤンチャム やんちゃポケモン"
"敵に ナメられないように 頑張って 睨みつけるが 効果は 薄い。"
ヤンチャムの説明と共に図鑑の画像には目をキリッとさせて睨みつけているヤンチャムが映っていた。しかし目の前にいるヤンチャムはニコニコとしていて、画像とはかなり違っていた。
「あれ、全然違う。本物はこんなに可愛いのに」
「図鑑じゃ頑張って睨んでるって言ってるし、こっちが普段の顔なんじゃないですかね?」
『そうかもね。それに私達はこの子達に敵視されてないんだと思うよ』
「ううーん。じゃあ、画像ももっと可愛くしてあげたらいいのに」
「図鑑にクレームつける人初めて見ました…」
図鑑の画像と本物の違いに不満そうなセレナ。
そんなセレナは本物のヤンチャムに可哀想ね、と声を掛けた。
すると顔が拭き終わったヤンチャムたちはハリマロンが食べていたポケモンフーズに目を光らせ、じっと見つめながら鳴いた。
「なんて言ってるんだろう?」
「ポケモンフーズを分けてくれって言ってるんじゃないかな?」
「こういう時、ポケモンの言葉がわかるといいよね」
『あれ、シトロンくん。この間ロゼリアに使った翻訳機って…』
そう言った私の言葉にシトロンが反応した。キラーンと眼鏡が光るとシトロンはリュックをガサゴソと何かを取り出した。