「一体何なんだ!?」

サトシがそう言うとトラックの上に大道芸人の3人が現れた。着ていた衣装を投げ捨てると、見たことのある胸元にRの文字が書かれた衣装になる。
そしていつもの登場文句を言い始めた。

「ロケット団!?」
「あいつら人のポケモンを奪い取る悪い奴らです!ピカチュウとニンフィアを返せ!」
「あら〜、それは無理な相談ね〜!」
「そのとーり!我らは人のポケモンを奪い取る悪い奴らだからな!」

ムサシとコジロウは私達にそう言うと車に乗り込んだ。発進する車の中にはピカチュウとニンフィアが捕まったまま取り残されている。

「待て!ピカチュウ、ニンフィア!逃がすもんか!」

サトシが車を追いかけたかと思ったらトラックの荷台の後ろに飛びついた。そして車はサトシが飛びついたまま行ってしまった。

「サトシ!」
『毎回無茶しすぎだよ…』

サトシの行動力の凄さにその場で何もできないでいた。セレナやユリーカも心配そうに車が走り去った後を見つめる。

「あれ、ランディ?ランディ!」

私達のすぐ後ろでは園長先生がランディの名前を呼んで探していた。ランディがいなくなっているらしい。
皆で園内を探し回るが見当たらない。

「ランディ、どこに行ったのかしら」
『もしかして…』
「ええ。逃げ遅れたのかもしれませんね」
「じゃあランディはあのトラックの中ってこと!?」

状況を整理して考えるとそれが妥当だった。ランディはあのトラックの中で逃げ遅れた。そして、捕まったピカチュウとニンフィアと共にどこかへ連れて行かれている。

「助けに行きましょう!」
「あたし達も行きます」

こうして私達はプルミエさんと一緒に助けに行くことになった。サトシ、ランディ、どうか無事でいますように。


*


プルミエさんの車に乗ってトラックを追うこと数分。道の柵に止まり何かをしているヤヤコマを見つけた

「ヤヤコマ!どうしてここに?サトシたちはどこ?」

矢継ぎ早にセレナがそう聞くと道沿いの方角を向いて強く鳴いた。ヤヤコマをよく見ると顔に泥がかかってうまく前が見えないようだった。多分サトシを追っている間にロケット団に攻撃されたんだろう。

『ヤヤコマおいで。拭いてあげる』

車から手を伸ばしハンカチで顔と羽を拭いてあげた。すると鈍い動きがなくなり、お礼を言うように鳴いた後すぐにパタパタと飛んだ。

『多分サトシたちはあっちに連れて行かれたんだと思います。プルミエさんヤヤコマを追ってください!』
「ええ!急ぎましょう!」

プルミエさんの車でヤヤコマを追って走っていると、廃倉庫にたどり着いた。ロケット団が乗っていたトラックが止まってる1番奥の倉庫まで行くと中にサトシとランディ、ピカチュウにニンフィアもいた。
だけどロケット団の姿はどこにもない。

「サトシ!みんな!無事だったのね!」
「おう!」

セレナが車を降りてそう声をかけると、サトシは拳をこちらに向けた。どうやらロケット団もすでに倒したようだ。
さっきまでの心配がすっと消えていく。良かった。本当に無茶ばかりで心臓がヒヤヒヤする。


*


「あのね!僕、ピカチュウとニンフィアを助けたんだ!」

幼稚園に戻るとランディが嬉しそうに園長先生に話しかけた。あのトラックの中で何かランディを変える出来事があったようだ。
ニット帽を深く被って"ポケモンなんて何するか分からない"と言っていたランディはもうそこにはいなかった。
そしてランディは振り返りケロマツを見つめる。

「あの、友達になれたかな?僕とケロマツ」
「ああ。ケロマツも俺もランディの友達さ。ずっとずっとな」

ケロマツがランディに向かって拳を出す。ランディも笑顔で拳を合わせた。

『サトシとケロマツだけじゃないよ。私達も友達。ね、みんな?』
「ええ、そうよ。ランディ!」
「はい。僕も僕のポケモンたちも友達です」
「ユリーカもデデンネも友達だよ!」

みんながランディにそう声をかけた。ランディは今日見た中で一番の笑顔を見せてくれた。

「僕も大きくなったらポケモントレーナーになるよ。ケロマツみたいな相棒と一緒に旅に出るんだ!」
「そうか!今度俺達と会ったらバトルしようぜ」
「うん、約束だよ!」

ランディとサトシはそう約束を交して、私達は幼稚園を後にした。プルミエさん、園長先生、子供たちがお見送りをしてくれる中夕陽に照らされた道を進む。

「あれ?ねえナマエ、帽子は?」
『え、ほんとだ…。もう、ムウマッ!』

ユリーカが不思議そうに言ったことでベレー帽が無いことに気づく。昼間にムウマに渡してから色々あって帽子を被っていない違和感に気づいていなかった。
そして腰に付けたムウマのボールを取り出して投げる。出てきたムウマはシシシッと笑うと私の周りをくるくる回る。
サイコキネシスで私の鞄を開けると、ベレー帽がふよふよと浮かびながら出てきた。よく見ると少しクシャッとしている。

本当にこの子のイタズラ好きは、と頭を抱えた。



to be continued…


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