園長先生に連れられてやってきた男の子は、皆が出しているポケモンには見向きもしなかった。むしろ目を背けるばかり。そんな男の子をサトシは気にかけて声をかけた。
「ランディだよな?俺はサトシ。どうだ、ケロマツと友達にならないか?」
ランディと呼ばれたそのニット帽の男の子の前にケロマツを抱えて差し出した。
「大丈夫。暴れたりしないって」
「ううん、いいよ。いいよ」
「じゃあポケモンフーズあげてみる?」
ひょこっと後ろからデデンネを肩に乗せたユリーカもランディに声をかけた。
「嫌だよ!怖いもん!」
しかし、ランディは大きな声をあげ後ろを向いてニット帽を深く下ろす。ニット帽を被る手は少しだけ震えていた。
ユリーカがデデンネにポケモンフーズをあげたら怖くない、と言うも伝わらない。
「もう僕は騙されない。ポケモンて何をするか分からないんだもん。」
そう言うとランディは以前にハネッコに突然かぜおこしを使われた事を話した。
「僕、ハネッコと仲良くなりたかっただけなんだ。なのに…」
『そんな事があったんだね』
「そのハネッコは何かにびっくりしただけなんじゃ?」
「何が起こるか分かんないのもポケモンの楽しさだよ」
「あんまり気にすんなよ、ランディ」
「だけど!だけどやっぱりポケモンは怖いよ!友達にはなれない!」
私達がランディに声をかけるも、ランディの意思は固いようでまたニット帽をぎゅっと掴んで大きな声で友達にはなれないと言った。
これは案外根深いかもしれない。どうにかしてランディのポケモンへの恐怖心を解いてあげたい。
そうこう考えていたら急に車のクラクションが聞こえてきた。振り返ってみるとそこには大きなトラックが止まっていた。
荷台がゆっくり開くとその中には女の人と男の人?にしては小さいがクマシュンの被り物をした人がいた。
「はーい!よい子のみんな、こんにちはー!」
「ニャーたち…、いや私達の素晴らしいパフォーマンス!どうぞご覧あれ〜」
そう言うと2人は手に持った幾つもボールをジャグリングして見せた。突然始まった大道芸人2人による楽しそうなショーに子供たちが駆け寄る。
『なんだか楽しそうなショーね』
「ええ、行きましょう!ランディも」
私達もランディを連れて近くでショーを見ようと追いかけた。
「私達はボランティアで子供たちに素敵な時間を提供しにきましたあ〜!」
「俺もやってみたいなあ!」
「ツベツベ!大歓迎です!一緒に楽しく遊びまベア」
近くでジャグリングを見ていると横にいるサトシがそう言った。すると運転席からツンベアーのきぐるみを来た人が現れた。
どうやら参加OKらしい。わらわらと子供たちが舞台へ上がっていく。セレナ、シトロン、ユリーカ、それに私も続いて舞台へ上がる。
皆が舞台に上がると女の人とクマシュンの被り物の人はひとりひとりにボールを配った。
「はい、みんな!このボールを使ってくださあい!」
「これにゃら、初めてでも簡単にできるニャ。いや、できますですよ〜」
クマシュンの被り物の人の喋り方が少しだけ気になるけど、どこかの方言なのかもしれない。私は気にするのをやめてお姉さんからピンク色のボールを受け取った。
「みなさーん、ボールは貰いましたベア?」
「「「はーい!」」」
ツンベアーの人がそう聞く。皆元気よく返事をした。
これからどんなショーが始まるんだろう。少しだけワクワクした。
「では、始めるよ!掛け声に合わせてボールを投げるよ!」
「…ワン!ツー!ベアー!」
ベアー!の掛け声に合わせて皆が上にボールを投げた。
瞬間、辺りが煙に包まれる。煙たくて周りも見えなくて何が起こったのか分からない。
「うそ、どうなってるの!?」
「ボランティアの人たちはどこに居ます!?」
「お姉さんー?」
『皆、大丈夫!?何が起こってるの?』
「とにかく降りよう!足元に気を付けて!」
皆がどよめく中、サトシの声により皆舞台から降り始めた。私も子供たちが怪我をしないよう、手を引いたり誘導をした。
サトシ以外全員降りたところで突然上から何かが降ってきた。その勢いでサトシは舞台から落とされてしまう。
そして舞台を見るとピカチュウとニンフィアが透明なケースに閉じ込められていた。
「一体何なんだ!」