私の歩幅に合わせて歩くグラエナ。私達は噴水広場を通り抜け、ロゼリアとはぐれた場所から正反対の所までやってきた。グラエナを信用してない訳ではないが、ロゼリアが誤ってこの街を出てしまってたらもう見つけようがない。そんな最悪の想像をしていると、グラエナが吠えたと同時に走り出した。

『グラエナ待って!』

見失わないようにグラエナを追いかけると、目の前でグラエナと挨拶を交わしているロゼリアがいた。
やっと見つけることができた嬉しさと安堵でぺたりの地面に座り、思いっきりロゼリアに抱きついた。

『ロゼリア!もう、どこ行ってたの。凄く心配した。貴方がいなくなったらって思ったら凄く悲しくて…。グラエナや他のみんなも心配してたのよ?』

ぎゅっと抱きついたのが苦しかったのか、するりと私の腕から抜けたロゼリアは嬉しそうに両方の花を揺らした。

『もう、いつまでもマイペースなんだから』

そう言いながら優しくロゼリアの頭を撫でると、私に3つの影が重なった。

「トレーナーさんが見つかって良かったねロゼリア!」
「やっぱり迷子になってたんじゃないのか」
「でもこの子はシトロンを探してたんじゃないの?」

見上げると、ブロンドの綺麗な髪をサイドに結んだ小さな女の子、黒髪にキャップを被った男の子、ミルクティー色の綺麗な髪をした可愛らしい女の子が私を見ていた。
私は3人を不思議そうに見つめていると、後ろから見知った懐かしい顔が現れた。

「ちょっとみんな、僕が最初に声をかけるって言ったじゃないですかもう!ナマエ、大丈夫ですか?」
『え…。シ、トロンくん?』
「はい、シトロンです。久しぶりですね。こっちに戻ってきてたんですか?」

そう言って座り込んでいた私に手を差し伸べたシトロン。伸ばされた手をゆっくり握るとぎゅっと引っ張ってくれる。
立ち上がると思ったよりも近くにシトロンの顔があって、恥ずかしくて距離をとった。
そしてそれを悟られないようスカートに着いた土埃をトントンと払った。

『うん、さっきミアレシティに着いたばっかりなんだ。そしたらロゼリアが急にいなくなちゃって探し回ってたの。ロゼリアはシトロンくん達が見つけてくれたの?』
「見つけたと言うよりかはロゼリアが僕を見つけた、と言うのが正しいかもしれませんね」

シトロンの言っている意味が分からなくて、はてなマークを頭に浮かべているとシトロンと同じブロンド髪の女の子が前に出てきた。

「その子ね、ずっとお兄ちゃんに向かって何か話してたんだよ!お兄ちゃんのマシンで翻訳してみたんだけど、失敗して爆発しちゃって…。
そしたらね、お兄ちゃんのマシンが爆発するの分かってたみたいに"まもる"を使ったの!」
『ふふふっ、そうなんだ。相変わらず、ロゼリアは勘がいいのね』

昔、何回かシトロンのマシンを見せて貰った事がある。その時も案の定失敗して爆発した。そして私達2人は爆発に巻き込まれたのにこの子だけは"まもる"を使っていた事をふと思い出した。

『ね、もしかして貴方ユリーカちゃん?』
「え?何であたしの名前…」
『ユリーカちゃんが赤ちゃんの時に私会ったことがあるの。その時と変わらず可愛いね』

ぽんぽんとユリーカの頭を撫でるとユリーカは嬉しそうに手にすり寄って来た。
そして頭を撫でながら私は自己紹介がまだだった事に気づく。

『そういえば、自己紹介がまだだったよね。私の名前はナマエ。この子が私のパートナーのロゼリア』
「はいはい!あたしはユリーカ!こっちはあたしのお兄ちゃんなんだけど。もう知ってるか、あはは。」
『ユリーカちゃん。よろしくね』

そしてサトシとピカチュウ、セレナとも挨拶をした。偶然なことに2人とも年が近くてすぐに打ち解ける事ができた。
2人と話をしているとユリーカが私のスカートの裾をちょんと摘んで話しかけてきた。

「あのね、ナマエのグラエナ触ってもいい?」
『いいよ。グラエナはね喉元を触ってあげると喜ぶんだ』

地面に座って待機していたグラエナの喉を撫でてあげるとグルルと鳴らしながら気持ちよさそうな表情をした。

「わあ、ほんとだ!グラエナかわいい〜!」
『ユリーカちゃんはお世話上手だね』
「…よし、決めた!ナマエ、キープ!お願い、お兄ちゃんをシル・ヴ・プレ」

グラエナを撫でていたユリーカがいきなり立ち上がり私の前まで来ると跪いてそう言った。

『きーぷ?しる、ぶ、ぷれ?』
「わああああ、ユリーカ!それはやめろって言ってるだろ」

シル・ヴ・プレの意味が分からず突然のユリーカの行動に吃驚していると、シトロンが真っ赤な顔でリュックの後ろから出たアームでユリーカを持ち上げた。

『ユリーカちゃんそれってどういう意味?』
「お兄ちゃん1人じゃ頼りないでしょ?だから、あたしがお兄ちゃんにしっかりしたお嫁…」
「わあわあわあ、もう言わなくていいから!恥ずかしい!」
「だから、考えといてね」
「考えなくていいですうう」

アームに釣られながらもばちん、とウインクを私に送ったユリーカ。そしてさっきよりも顔が赤くなってオクタンみたいになったシトロンに何処かへ連れて行かれてしまった。

「いつもの事だから気にしなくていいよ。すぐに戻ってくるわ」
『う、うん』

サトシとセレナは慣れているようで普通に歩き始めた。それに戸惑いつつも私も2人に並んだ。

「にしてもミアレシティについて早々大変だったな」
『ミアレシティ半分くらい走り回ったかも。だけどロゼリアが見つかって本当に良かった』
「そういえば、ナマエはどうしてカロス地方に来たの?」
『もともと私のパパはポケモン研究者でね、昔はパパについて色んな地方に行ってたの。それでカロス地方にも小さい時にちょっとだけ住んでた。
その時に色々あってね、お世話になった人がいたんだ。だからその人に会いたくてカロスに来たかったんだ。
だけど、パパのなかなか許可が下りなくて。
どうしてもって駄々をこねた私に、ポケモンバトルもある程度出来るくらいになったらっていう条件で1人でカロスに行ってもいいって事になったの』
「へえ。じゃあナマエはバトル強いのか!?」

サトシがキラキラした目でこちらを見つめてきた。そんなに強い訳じゃないって言うのが少しだけ心苦しい。

『それがそんなに強くは無いんだよね、あははは。パパに認められるまではバッジとかも頑張って集めたたんだけど、私も含めてこの子達バトルバトルっていう感じじゃないんだ。だからバッジ集めも途中で辞めちゃって…。
バトルは必要なときはするけどそれ以外はしないんだ。なんだかごめんね?』
「そうなのかー、残念。でも、バトルしたくなったらいつでも言ってくれよな!」
『ふふ、ありがとう』

出会って数十分しか経ってないけど、サトシはバトルが大好きなんだろうなと感じた。バトルの話になると食いつきの違いと目の煌きが違った。

「ね、その会いたい人ってどんな人なの?」
『…、その人はね、勉強熱心で、優しくて、いつも助けてくれて、引っ越しばかりして友達があまりいなかった私に手を差し伸べてくれた人かな』
「そうなんだ、その人ってとーっても素敵な人なんだね」

セレナに質問をされて、遠回しではあるが彼のことを言ってしまった。素敵、と言われて自分のことじゃないのに嬉しくなってしまった。

「へえ、ナマエには会いたい人がいてカロスに来てたんですね」
『シ、シトロンくん!?』

いないと思っていただけに、後ろからしたシトロンの声にかなり驚いてしまった。1番聞かれたくない人に聞かれてしまったのかもしれない。

『えっと、あの、それはそのー。会いたい人というか、好きな人というか何というか…』

誤魔化そうとしても頭の中が真っ白になって、ごにょごにょしてしまう。そうしているうちに、どんどんと墓穴を掘っていく。
身振り手振りで何とかしようもそうはいかない。語尾が尻すぼみになって終いには何も言葉が出なくなってしまった。

「会えるといいな、その人!」
「そうですね!カロスは広いと言えど、人同士の繋がりはあるはずです!どこかできっと会えますよ!」

私の淡いこの気持ちが、カロスに来て1日目にして公になる事にいたたまれなくなっていただけに、サトシの1言に拍子抜けしてしまった。
シトロンもシトロンでそこまで気にしてないようで安心したようなしてないような。

それから和気あいあいと歩いていると私達5人に誰かが話しかけてきた。

「おお!シトロンとユリーカじゃねえか!」


to be continued…


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