「着いたな。ミアレシティ」
「こないだはゆっくり見られなかったけど、世界のファッションをリードする街って言うだけあるわね。街も人もみんなオシャレ!プリズムタワーも素敵〜!」
「そ、そうですね…」
「まあまあ、かな」
サトシ、セレナ、シトロン、ユリーカの4人は再びミアレシティへ戻ってきていた。セレナによるプリズムタワーの話に歯切れの悪くなるシトロンとユリーカ。
そして話題はミアレジムに移り、サトシがミアレジムから追い出されたという。
「ええ、バッジが4個ないとチャレンジできないジムもあるんだ…」
「そ、そんな訳で!とりあえずこの街は素通りしませんか」
「そうそう!」
「えぇっ。私じっくり見てみたいんだけど…」
ミアレシティを早く通り過ぎたいシトロンは素通りすることを提案するが、セレナは不満気にそうだった。
焦らなくてもいい、というサトシも含めてシトロンとユリーカは早くこの街を通り過ぎようと2人を強引に連れて行こうとした。
そんな4人の周りに突然甘い香りが漂う。落ち着いたいい香りに焦っていたシトロンとユリーカ、不満そうなセレナの気持ちも落ち着いていく。
「なにこれ、凄くいい香り!香水のお店が近くにあるのかな?」
「確かにとても落ち着く香りですね」
「すごーくいい匂い!」
「俺はちょっと眠くなるかも」
いい香りに気を取られていると後ろからとあるポケモンの声がした。4人が振り返って見ると、そこにはロゼリアが1匹、両手の花を揺らしながら立っていた。
「ロゼリアだ!このいい匂いはロゼリアの甘い香りだったのか!」
サトシがそう言うと横にいたセレナはポケモン図鑑をロゼリアに向けた。機械音と共にロゼリアの図鑑説明が流れる。
"右手と 左手で 2種類の 毒を 使いわけて 攻撃する。香りが 強いほど 元気だ。"
「へぇ。いい香りがするって事はとっても元気なのね、このロゼリア」
「ロゼリアかわいー!お兄ちゃん
このロゼリア、キープ!」
「ユリーカ待って。このロゼリアの両手の花、とても綺麗に手入れがしてある。もしかしたら誰かのポケモンかも…」
「ええー、そうなの。ざんねん」
シトロンはそう言うと、あからさまにしゅんとしたユリーカの頭を優しく撫でた。そして4人が話をしているの間もロゼリアは何かを訴えるように鳴き続ける。
「もしかしてこのロゼリア迷子なんじゃないか?」
「そうね。さっきからずっと何かを訴えてるみたいだし」
「よし、俺達がお前のトレーナーを一緒に探してやるよ!」
サトシが膝を折ってロゼリアに視線を合わせそう言う。しかしロゼリアは首を振ってまた鳴き続けた。
「何だかトレーナーを探してるようじゃ無さそうね」
「じゃあ、この子はあたし達に何を言いたいんだろ?」
「うーん、ポケモンの言葉は分からないしなあ」
セレナ、ユリーカ、サトシがこのロゼリアに頭を抱えていると後ろにいたシトロンの眼鏡が光った。
「ふっふっふ、お任せください!サイエンスが未来を切り開くとき!シトロニックギアオン!こんな時の為に用意していたナイスなマシン!名付けてポケモン語翻訳機!」
「いや、そのまんまじゃん」
意気揚々とマシンの説明をするシトロン。そしてその手にあるマシンに目を光らせながらに「科学の力ってすげー!」と関心するサトシ。
一方、セレナとユリーカは今回ばかりは興味があるようだったが、ネーミングにはすこし疑問があるようで。
「まだ試作段階なのですが、以前ホルビーで試しているので効果はあるはずです!さあ、ロゼリア。喋ってみてください」
ポケモンの発する声や表情、仕草などを解析して言葉の意味を理解するとが出来るという翻訳機。
そのマイクをロゼリアに向ける。
《シ、ト、ロ、ン。シトロン!シトロン!》
「え、僕?」
「何でシトロンの名前をこのロゼリアが言ってるんだ?」
「シトロンはロゼリアのこと知ってるの?」
「いえ、僕にロゼリアの知り合いはいないはずなんですが…」
翻訳機から出てきた言葉はシトロンの名前だった。そしてその後もロゼリアは喋り続けるがシトロンの名前しか聞こえない。
「もしかしたらチューニングが合ってないも」
シトロンはそう言って翻訳機をいじり始める。
しかし、いじっているうちに翻訳機が熱を持ち始めた。キューという音と共に煙が吹き上がり、最終的には爆発してしまった。
「ケホケホ、こんなつもりでは…」
「もう、お兄ちゃん。また失敗じゃない」
「もっと改良します…」
爆発に巻き込まれた4人とも髪の毛がアフロになってしまう。
そして誰もが翻訳機が近くにあったロゼリアも爆発に巻き込まれたかと思っていたが、ロゼリアは"まもる"を使って免れていた。
「お前、"まもる"を使ったのか!」
「あなた凄いわね!まるでシトロンのマシンが失敗するのを分かってたみたい!」
「まもる、ロゼリア。あれ、もしかして?いやいや、そんな訳…」
シトロンが何かを思い出そうと、うんうんと肘をついて考えていると、ロゼリアがちょこちょことシトロンの足元までやってきた。
「もしかしてキミは僕と会った事がありますか?」
シトロンはロゼリアに目線を合わせるため屈んでそう言った。するとロゼリアは嬉しそうに頷くと両手の花を揺らした。
そして揺れる花から黄色の粉が飛びシトロンへかかった。
「っ、これは、し、しびれ粉…、」
しびれ粉を全身に浴びたシトロンは痺れながらも何故か納得したような表情になった。
「お兄ちゃん大丈夫!?」
「だ、大丈夫です。僕、このロゼリアの持ち主が分かりました!ナマエ、カロスに戻ってきてたんですね」
シトロンが名前を出すとロゼリアは飛び跳ねて喜び、また甘い香りを花から出した。
「ナマエ?」
「知り合いなのか?」
「はい。小さい時に仲が良かったんです。ロゼリア、ナマエの所まで案内してもらえますか?」
ロゼリアは大きく鳴くと、嬉しそうに踵を返して先頭を歩く。シトロンとまだ状況を掴めていないサトシたちはそのままロゼリアの後をついて行った。