「おお!シトロンとユリーカじゃねえか!」
「ええっ、パパ!?」
「デンリュウ!」

シトロンとユリーカの名前を呼んだ人はヘルメットを被り、スクーターの後ろにデンリュウを乗せていた。
そう、彼はシトロンとユリーカの父親のリモーネだ。数年ぶりに見ても見た目は変わらないな、なんてふと思う。
リモーネを知らないサトシとセレナは驚いて声を出していた。

「ええっと、紹介しますね?」
「あたし達のパパで」
「リモーネだ。俺はこの街でデンリュウと一緒に電気屋を営んでいるんだ」

紹介している間、どこか気まずそうにしているシトロンとユリーカに疑問に思いつつもそこまで気には止めるほどでは無いと思いスルーをする。
リモーネが自己紹介したあと、ユリーカが順番にサトシとセレナと私を友達だと紹介した。
瞬間、リモーネは「モーレツに感動している」と言って泣き始めたので吃驚してしまった。
そういえば、リモーネさん結構熱い人だったな。

「俺、サトシです。それで、こっちが相棒のピカチュウ」

そしてサトシを始めにセレナも自己紹介をして、次は私の番かな、と思っていたら私が名乗るより先にリモーネが話し始めた。

「そっちお嬢さんはもしかしてナマエちゃんか?」
『はい!ナマエです。リモーネさんお久しぶりです。覚えてくれていて嬉しいです』
「覚えるのなにも忘れる訳がないよ。にしても小さい時も別嬪さんだったのに、また綺麗になったんじゃないのか?」
『いえいえ、そんなことないです。あははは』
「シトロンもうかうかしてると他の男に取られちまうぞ?このこの〜」
「そ、そんなんじゃないよ…」

にやにやしながらシトロンを小突くリモーネ。変わりなく元気そうで良かった。それに私はカロスには1年もいたかどうかの短い期間しか住んでいなかった。なのに私の事を覚えてくれていたのが嬉しかった。

「あ、そうだシトロン。たまにはうちにも顔出せよ」
「ええっと、その…」

そう言ったリモーネに急に慌て始めたシトロンにユリーカ。

「じ、じゃあパパ。あたし達用事があるからここでバイバイね」
「ああ、待て。シトロン。何度も言うようだが、チャレンジャーに厳しくするのはいいが、厳しいだけじゃいいトレーナーは育たない。頼むぞ、街が誇る"ミアレジムジムリーダー"」

リモーネのその一言でサトシとセレナは顔を合わせる。

「「…ミアレジム、ジムリーダー?」」

2人がシトロンがジムリーダーだということを脳内で噛み砕いている間にリモーネはデンリュウと共に颯爽とスクーターに乗った。

「サトシくん、セレナちゃん、ナマエちゃん。2人をよろしくな。後で家の店にも寄ってくれ」

そう言い残すとそのままスクーターは走り去って行ってしまった。リモーネが見えなくなると振っていた手をおろし、シトロンとユリーカはゆっくりこちらを向いた。

「あ、あのぉ…」
「シトロン!どういう事だよ!」
「いやあ、その、」

サトシとセレナは顔を大きくして怒った。私は3人の間に何があったのか知らないから、ただ2人を見つめるだけだった。

「お兄ちゃん、もう無理っぽいよ」
「そうですね。正直にお話します」

正直に話す、といったシトロンに私達はついて行き近くの噴水広場まで来た。
噴水の縁に座ったシトロンは少し俯きながらも、ぽつぽつと話し始めた。

「実は僕、ミアレジムのジムリーダーなんです」
「なんで黙ったたんだよ…」
「黙ってるつもりは無かったんです。ごめんなさい。実は色々あって…」

シトロンいわく、ジムリーダーは忙しくて自分の時間がほとんど取れなかったらしい。そこでシトロンはジム戦のお手伝いをしてくれるジムリーダーロボットを作った。だけどロボットのプログラムがしっかり出来なくてジムを追い出されたそう。

「それからジムに入れなくなったのか」
「はい。何度かトライしてみたんですが、シトロイドはバトルフィールドに引っ込んだままで行けるのはジムのエントランスまでなんです…」
「なあ、とりあえずジムの様子を見に行ってみないか?」

サトシの1言によって私達はミアレジムのあるプリズムタワーに行くことにした。


U bookmark U next