夕食もとい旅立ちのパーティーが終わったあと、シトロンの家のリビングで私は1人ホットミルクを飲んでこれからの事を考えた。

あの時は勢いでリモーネに頭を下げてしまったけど、私はシトロンたち4人と一緒に旅に行くわけではない。

パパに1人でカロスに来てもいいって許可を貰って、こっちに来たらシトロンに会うっていう目標を立てていたけど、それも今日1日で達成してしまった。

顔見知りのプラターヌ博士の所で趣味のポケモンのスケッチをさせてもらうのも考えたけど、やっぱりするなら野生のポケモンをモデルにしてやりたい。
そんな事をぐるぐる考えていると、ミルクもだんだんとぬるくなってきた。

「どうしたんですか。難しい顔をしてますよ」

青地に黄色の雷マークがついた可愛いマグカップにホットミルクを入れたシトロンが私に声をかけた。
そして、ローテーブルにマグカップを置くと私の隣に座る。

『そんな顔してた?』
「はい。それはもう明日世界が終わるようなこわーい顔を」
『ぷっ、あははは。シトロンくん私そんな顔絶対しないよ。オコリザルみたいじゃない。』

オコリザルのように眉間にシワを寄せてモノマネをしたシトロンの顔が面白くてつい吹き出してしまった。

「ふふ、やっぱりナマエは笑ってる方がいいですよ」

そう微笑んだシトロンと目が合い、隣にいるというこの近い距離に心音が早くなる。心なしかさっきよりも体温も一度くらい上がった気がする。
何だか恥ずかしくて目を逸らし、マグカップを見つめながら私はぽつりぽつりと話し始めた。

『ありがとう。なんかね、私はこれからどうしようかなーって思ってたの。みんなは旅に出ちゃうでしょ?
私はカロスに行きたいっていう気持ちだけで来ちゃったからさ、来てからのこと何も考えてなかったんだ。
趣味のポケモンスケッチも続けたいけど、拠点が無いとなあ…』
「それなら、僕と一緒に旅に出ませんか?」
『えっ…』

私はシトロンの言った言葉に吃驚して視線を上げた。バチッと目があって、シトロンのいつになく真剣な瞳に目が離せなくなった。

「久しぶりにナマエと会って気づいたんです。昔から、ナマエといると何だか凄く安心するんですよね。"大丈夫"と言ってもらえるだけで、不安とか全部吹き飛んでしまうんです。
今日だってシトロイドとのバトルの前にも言ってくれたじゃないですか。そのお陰でリラックスしてバトルする事ができました。
完全に僕の我儘なのは分かってるんですが…。その、僕と一緒に旅に出てくれませんか?」

まさかシトロンに旅に一緒に行こうと言われるなんて思ってなかった。
私の答えは、もちろんYESだ。私が返事をしようと口を開こうとしたとき、ぶわっと顔を真っ赤にさせたシトロンがあわあわしながらこう続けた。

「あっ!そ、そのっ、僕とって言うのは、ふ、深い意味はなくてっ。
ほら僕だけじゃなくてユリーカやサトシ達もいますし!旅は人数が多いほうが楽しいじゃないですかっ?
あ、あと野生のポケモンとも出会えますし、ナマエの大好きなスケッチも捗ると思うんです!
そ、それに、昼間言っていた会いたい人にもそのうちっ…」

そういえば会いたい人がいるなんて昼間に言ったな、とと思い出す。そんな事を覚えてくれているなんてシトロンくんらしい。
真剣に話していたのに急にあわあわし始めて、私はそれが面白くてつい笑ってしまった。

『ふっ、ふふふふっ』
「な、なんで笑ってるんですか!」
『ううん、何でもないよ?私、皆と旅に出たい!』
「決まりですね!さっそく明日、サトシ達にも話しましょう」

私は頷くとマグカップに口をつけた。もう冷めてしまったミルクが何だかさっきよりも甘く感じた。


"会いたい人はキミだったんだよ"

この真実を告げるのはもう少し先でいいかな。



to be continued…

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