「なあ、ナマエさ、ハートにしねえの?」
朝、鏡の前で右目にかかるくらい大きなスペードを書いていたら後ろから抱きついてきたエースがそう言った。
ちゃっかり顎を肩に乗せてる。私の肩は顎置きじゃないっての。
あと変な触り方をやめてほしい。昨日の情事を思いだしてしまうから。
「もう、エースいきなり抱きつかないでよ。手元がブレる。」
「デュースとお揃いとか気に食わねえんだけど」
むくれ顔のエースと鏡越しに目が合う。
メイクの柄は入寮時にイニシャル順に並びAから順番にハート、スペード、クローバー、ダイヤに分けられる。
気に食わなかったら変更もできるんだけど、変更には変更届なるものが必要でそれが面倒で大体の人は変えない。
「これ変えるのに寮長に変更届出さないとだめじゃんか。変更届に理由書く欄あるの知ってるでしょ?なんて書けばいいのよ」
「そんなのエースくんの彼女だから、エースくんとお揃いにしたいですって書きゃいーじゃん」
そう言うとエースは私の顎に手をやってグイッと横に向かせるとキスをした。
まだスペードの中を塗りつぶしてないしリップも取れてしまう。
「ちょっと何するの」
「オレとお揃いじゃねーと何かすげーやなんだよ。」
エース・トラッポラの場合…
「オレとお揃いじゃないと嫌だ」