傑くんと



ところ狭しと並んだ商品棚からお目当てのものを取ってカゴに入れていく。傑くんの持ってるカゴには私の化粧水とハンドクリーム、傑くんが入れたお菓子と缶チューハイが入っていた。

「傑くん重くない?」
「大丈夫。それにそんなに入ってないだろう?」
「そっか。もう、買うものない?」

そう私が聞くと顎に手を当てて考え始める。私もカゴの中を見つめながら買い忘れがないかを考える。
すると、あっと傑くんは声を出した。

「そういえば…あれをまだ買ってなかったね。」
「あれって?」
「ゴム」

傑くんはそう言うとニコッと笑った。そして迷うことなくそれが置いてある棚の方へ行くから、私も後ろからついていった。

「もう無かったっけ?」
「昨日、結構使ってしまったからね。誰かさんのせいで」
「私のせいなの?」
「お酒弱いのにべろべろになるまで飲んで、私によがってきたのは誰だっけ?」

0.01mmやら0.02mmやら粒付など様々な種類がある棚をじっと見つめ探す傑くんは、私をチラッと見て笑うとまた視線を商品棚へ戻した。

「あれは友達がたくさん飲ませから!普段はあんなに飲まないよっ」
「ふぅん?でも名前が泥酔するとあんなになるって分かったんだ。次からは外でお酒は控えるようにしてもらわないと」
「ほんとだってば。それにお酒くらい自分でセーブできるし」

私の言い分など聞いてない傑くんに私はイライラして、いつも使ってるゴムの箱を掴んでカゴに入れた。
もう、ゴム買っても今日は絶対シてやんないもん。そう決意してレジに行こうとすると傑くんが手を掴んできた。

「っ?…なに」
「それじゃない。いつも使ってるのはこっち」
「え、いつもこの色の箱じゃなかった?」

私がカゴへ入れた箱を丁寧に棚に戻すと、同じ色だけど違う箱を取ってカゴへ入れた。

「君は色で判断してるのか…」

はあ、っとため息をついた傑くんに呆れられているのが分かり余計にムッとしてしまう。ゴムなんてどれも一緒にしか見えないし。
そして一歩近づいた傑くんは腰をおって私と同じ目線になる。ゆっくり近づいた顔にキスされる、と思いぎゅっと目を瞑った。

「名前のナカに入るものなんだから、ちゃんと覚えてくれないと」

キスはされずに、耳元でいつもより低めの吐息が混じった声でそう囁かれる。トントンと人差し指でおへそより下の子宮あたりを触られて、その瞬間に一気に体温が上がり顔が熱くなった。
もう恥ずかしくて恥ずかしくてその場から去りたい気持ちでいっぱいになった。

「念のためにもう一つ買っておこうかな」

なんて言っている傑くんを放ってレジへと向かう。もうバカ、ここお店なのに。変なことしないでよ。

「あれ、シャンプー買うとか言ってなかったけ?」
「もうお会計するから早く!傑くん!」
「はいはい」

まだ商品棚を物色しようとしている傑くんをレジ列から呼ぶ。
しばらくしてレジ列に並んでいる私の横に来た傑くんのカゴの中には私がいつも使ってるシャンプーが入っていて、なんかイライラしたから傑くんの腕をグーで殴っておいた。