棘くんと




カゴの中に入った商品たちを見つめ、あと何かいるかなあと思考を巡らす。お菓子は入れたし、ジュースも入れた。
ジュースもう一本入れとこうかなと思ってペットボトルが並んだコーナーへ行く。オレンジジュースにするか炭酸にするか迷ってると、後ろに気配を感じた。

「高菜、ツナマヨっ」

これも、これも、と言ってカゴにお菓子を入れる棘くんの手には大量のお菓子があった。それをどさどさっと入れると私がどちらにするか迷っていたオレンジジュースと炭酸ジュースも両方カゴに入れた。
だいぶ重量が増したカゴをひょいっと持った棘くんはまたお菓子コーナーへと向かう。

「棘くん、いっぱい入れすぎ。二人じゃこんなに食べれないよ?」
「いくら?すじこ、明太子」

一日映画見るんだから沢山あっても問題ない、なんて言ってるけどこれは流石に多すぎる。私はカゴに入ったお菓子を食べれそうな物だけ厳選して棚に戻していく。

「もう、一日いるからって加減があるよ。いらないやつ戻すからね?」
「…おかか」
「だーめ。無駄遣いだよ」

大量のお菓子の中から棘くんが好きなもの、私の好きなものだけを厳選して他は棚に戻していくと、かなりカゴの中の量は減りすっきりした。中にあるものがよく見えるようになると、ポテトチップスの袋の下にお菓子とは違う箱があるのに気づいた。
そっと袋をよけて見ると、赤く細長い箱が出てくる。パッケージには、0.01mmの文字。所詮コンドームというやつだ。

「ね、棘くん。これって…」
「ツナ!」

赤い箱を持って棘くんに尋ねると、私の方を見た棘くんは”ばれた?”なんて言ってニコっと笑う。じわじわと恥ずかしくなって声がどんどん小さくなっていく。

「えっと、その…、今日、する、の?」
「しゃけ。…おかか?」
「いや、じゃないけど…」

赤くなった頬を見られたくなくて、持っていた箱をカゴに戻して俯く。すると棘くんはぐいっと顔をのぞき込んできて、私の小さな抵抗は無駄になる。

「高菜、ツナマヨ。おかか?」
「〜っ!」

”名字とそういう事したい。だめ?”なんて、私の顔のすぐ側で言われたからもう何も言えなくなってしまった。視線を泳がせていると、ちゅっと頬にキスをされた。

「すじこ、明太子、おかか」

”お菓子はいいけど、かなり喉乾くと思うからジュースはなおしたら駄目だよ”と言った棘くんはまたお菓子の商品棚を物色し始めた。
多分だけど、これから見る映画の内容なんて一切入ってこないと思う。