悠仁と





「大丈夫?風邪か?」

って言いながら少し屈んで顔を覗き込んでくる。手のひらを私のおでこに当てて、反対の手もおでこに当てて熱があるか確認される。

「んー、確かに熱いかもな。…んじゃ、行くぞ」
「えっ、どこに?」

ぐいっと、手を引かれて何処かに連れて行かれる。
どこに?って聞いたら悠仁は立ち止まって振り返った。その顔はいつにもなく真剣で。

「帰るんだよ、部屋に。このままじゃ酷くなっちゃうだろ。ちゃんと布団入って暖かくしねえと」
「せっかく悠仁と一緒に入れるのに…」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、風邪拗らせて会えなくなる方が俺はつらい。」

悲しそうな顔をした悠仁に何も言えなくなってしまって足元を見つめた。すると私の方へ1歩踏み出した悠仁の足が視界に入るから、すぐ前まで来てることが分かった。
「顔上げて」そう言われて顔を上げると悠仁は両手で私の頬を挟んだ。

「もー、そんな顔すんなって。寂しくなったら看病してやっから」
「じゃあ部屋戻ったらずっと手握ってくれる?」
「おう!任せとけ」

へらっと笑った悠仁の顔にきゅんと胸がなった。デートは無くなっちゃったけど、風邪もたまには悪くないかもしれない。