オレ達に、幸あれ






何となく部活に顔出したり、適当に時間を潰して寮に帰ってくる。ここ1ヶ月くらいそんな感じに過ごしている。
早めに帰ってくるとナマエちゃんとリドルくんが一緒にいるところに遭遇しそうで、敢えて少し遅めに調整した。
今日もリリアちゃん達とお菓子食べて軽く駄弁った後、寮に帰って来た。すっかり暗くなった廊下の窓を眺めながら部屋に戻ると、丁度ドアの前にナマエちゃんがいた。

「…ナマエちゃん」

オレが話しかけるとこっちを向いたナマエちゃんは口をきゅっと結んで真剣な表情だ。
どうやって切り抜けようか、なんて適当な嘘を頭で何個か考える。

「ケイト先輩、話があります。なので入れてください。」

オレが適当な嘘を言う前にそういったナマエちゃんは有無を言わさない感じで、断れなかった。
ナマエちゃんの前を通り部屋のドア開けて中へ入れる。適当に制服のジャケットを椅子にかけるとオレはベッドへと座った。

「話って?別れ話ならオレ、聞かないよ」

自分で言って随分棘のある言い方をしたと思う。こんな状況にさせてるのはオレなのに別れたくないとか我儘もいいところだ。
ナマエちゃんはずっと部屋の真ん中で立ってて何故かビニール袋を手に持っていた。

「別れ話じゃないです。私、ケイト先輩に謝らなくちゃならなくて」

少し震えた声で俯きがちにそういったナマエちゃんが顔を上げた。目があって1ヶ月ぶりにしっかりと見た顔は、眉を下げて泣きそうだった。
オレがナマエちゃんをこんな顔をさせてるんだ。そう思うとチクリと胸が痛んだ。

「私、ケイト先輩が甘い物苦手って知らなくて、我慢させちゃってごめんなさい。エースからそれ聞いて勝手に持って行くのやめて、寮長に渡したのもごめんなさい。もし、私がケイト先輩の立場だったら凄い嫌だった」

ついにはボロボロと涙を涙を流し始めたナマエちゃんは服の袖で目元を拭く。

(あーもう、そんなことしたら目が腫れちゃうよ。)

「好きなんです。ケイト先輩が好きだからっ 、このままは嫌なんです!…だから、仲直りしませんか?」

そう言ってナマエちゃんは手に持ってた袋から真っ赤なパッケージのカップ麺をオレに差し出した。パッケージには唐辛子のキャラクターが笑顔でプリントされている。
突然のそれにオレの頭に?が浮かぶ。

「辛いラーメン、購買で買ってきたんです。ケイト先輩好きなんですよね?」
「それ、誰から」
「トレイ先輩が教えてくれました」

トレイくん、いつも思ってること何も言わない癖に今回は随分とお喋りじゃん。
ホント余計なこと言わなくていいのに。でも今回だけは感謝するよ。

「だから、仲直りに辛いラーメン食べませんか?」

泣きながらそういうナマエちゃんが面白くて、ふふっと笑ってしまった。なんかオレが悩んでた事とちょっとズレてる気がするけど、全部どうでも良くなった。
オレはベッドから立ち上がり側へ寄り、ナマエちゃんの頬を伝う涙を指でそっと掬う。

「ほら泣いてたら目赤くなっちゃうでしょ、もう。オレ甘い物は好きじゃないけど、だからってナマエがリドルくんにお菓子持っていくのはもっとやだ。それにナマエが作ったお菓子だったら何個でも食べれちゃうよ?」
「ケイト先輩…」

泣きながらも嬉しそうな顔をしてオレの胸に飛び込んできた。胸に頬をすり寄せてぎゅうぎゅう抱きしめてくる。それに答えるように抱きしめ返した。
そのままナマエちゃんをそっと持ち上げて後ろに数歩下がる。ベッドの縁に自分のふくらはぎがついた事を確認して、抱きしめたまま背中からベッドにダイブした。ナマエちゃんをそっとベッドにおろして、潤んだ瞳を見つめた。

「ケイト先輩、ラーメンは?」
「ナマエは辛いの好きじゃないでしょうが。無理しなくていいよ」

顔にかかった髪をそっと耳にかける。ちょっと恥ずかしそうに目を逸らす顔が可愛くてどうしようもなくなる。そして唇が触れるか触れないかぐらいまで顔を近づけた。

「オレね、ナマエが好き。大好き。超すき。もうワケ分かんないくらい好き。」
「っ、…んっ」

ナマエちゃんが何か言おうとしたけど強引に唇にキスをした。


やっぱり、ナマエは譲れないよ。




fin.


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