バッドエンドのサイレンが鳴る


NTRでバッドエンド。大丈夫な人のみお進みください。



「ようやっと目が覚めたん?」

目を覚ますと、薄暗い部屋の中に居た。少しのカビ臭さとズキズキする頭の痛み。こんな場所は記憶の中にはない。ただ、声の主には心当たりがあった。禪院直哉と名乗った男だ。暗闇に慣れた目が映し出すのは、足と手に繋がれた鎖と鉄格子。


「ここどこですか?」
「禪院家の地下牢」
「どうして私こんなところに繋がれてるんですか?」
「恵君のせいやけど聞きたい?」


上っ面に笑顔を張り付けたような直哉からは感情を読み取れない。禪院家の人ってことは分かるけど、一般家庭出身の私には御三家のことなんて分からない。ただ、真希さんや真依さんとは血が繋がっているはず。そんな人間がどうして私を捕えているのか、さっぱり理解はできなかった。けれど、この人に下手に出たくない。本能でそう思った。


「無視はあかんやろ?」
「…別に聞かなくていい。ここから出して」
「それは聞けへんなぁ」
「は?」
「その挑発的な目、気に入らんな。もっと絶望して見せてや?」


そう言って男は私の前髪をグイっと掴んだ。強制的に私に上を向かせた男は、「恵君が迎えに来てくれるとええなぁ」と私の耳元で囁いた。悔しい。手足が自由ならこの男に一撃を入れてやるのに。

この男は、どうやら私と恵が付き合っていることを知っているらしい。そして、それを利用して何かを企んでいるようだ。付き合っていることを隠していたわけではない。だから、私が恵の恋人であることが知られているのは、不思議ではなかった。ただただ自分が恵のお荷物になるかもしれないという事実が悔しかった。


「恵が来るわけないじゃない」
「来るやろ」
「私のことどう認識してるか知らないけど、私と恵はそんな関係じゃないよ」
「強がりは可愛くないで?」
「別にあんたに可愛いと思われたくないし」


私の挑発に一瞬だけ、男が顔を歪めた。生意気が態度が気に入らないらしい。男は私の目の前にしゃがみ込む。今度は何をされるのだろう。平静を装うけれど、本当は怖い。目を見開いた男が、私の顎に手を掛けた。「ほんなら誰に可愛い思われたいん?」とニコニコ笑う姿は不気味としか言い表しようがない。


「恵君やろ?」
「……」
「俺がここであんたんこと抱いたら恵君どんな顔するやろなぁ」
「何言ってんの?」
「あんた自分の立場わかっとらんやろ?俺しかあんたがここに居ること知らんのやで?俺に媚びといたほうがええのんちゃう?」


その言葉の意味を理解して、身体が震えた。どんなに強がっても、私の人生の主導権は今、この男が握っている。まるで蛇に睨まれた蛙のように、身体がうまく動かない。こんなこと初めてだ。動けないことを知ってか知らずか、男が私のスカートからむき出しの足を下から撫で上げる。


「可愛がったるわ」
「やめて…!」
「恵君が嫌がることは全部やったんねん」
「他の男に抱かれた女のこと好きでいてくれるとええな?」
「や、やだ」


口しか動かない無抵抗な私の服の中に、男が手を差し込む。気持ち悪さから、ぞわっと全身に鳥肌が立った。「もう抵抗は終わりなん?」と私の耳元で囁いた男が首筋を舐め上げた。


ねぇ、恵。私たちどこで間違えたんだろうね。こんなことになるなら、告白なんてしなきゃよかった。付き合わなきゃよかった。走馬灯のように記憶が蘇る。出会わなきゃ、良かったのかな。絶望が心を蝕んでいった。