初夢


もう夜も更けた深夜1時。あけましておめでとうをして、「姫初めする」と言いだした一虎の深い愛に溺れて、気を失ってしまった私が目を覚ますと一虎が私を抱きかかえるようにして眠っていた。その逞しい胸に顔を摺り寄せると、薄っすらと目を開けて一虎は私の姿を確認した。首元に回されていたほうの手で、私の頭をポンポンと叩く。あぁ、一虎の腕の中安心するなぁ。って目を細める。


「水飲む?もうちょっと寝る?」
「みず、のみたい」

ちょっと待ってろ、と前髪をかきあげて水を取りに立ち上がる一虎。私も起き上がって下着と床に脱ぎ捨ててあった一虎のオーバーサイズのパーカーを身に着ける。一虎の香りに身を包まれて、まるで抱きしめられてるように感じられる。暖かくて、優しい。


「ほら」

部屋に戻ってきた一虎が、私にミネラルウォーターのペットボトルを投げつける。それを開けて、口をつける。喉が潤ったところで、隣に座った一虎が「お礼は?」とキスをねだった。ちゅ、と軽くその頬に口付けると、「そんなんじゃ足りないんだけど」と今度は一虎からキスをされた。


「なんで服着てんの?」
「寒いもん」
「脱がせていい?」
「やだよ、」

ベッドに私を縫い付けて、「逃げてもいいけど」とわざとらしく笑う。少しうっとおしそうに顔をしかめたら、頭を抱え込んで何度もキスされた。逃げる気なんてないけど、いくつになっても高校生並みの性欲に付き合わされる私の気持ちも考えて欲しい。たまには。


「やめる?」
「ん、大丈夫」
「やっぱやめるわ、風呂はいろ」
「ねぇ、一虎」
「なんだよ」
「もう一回だけ、ちゅーしたい」

はいはい、とふにゃっと笑った一虎の顔が近づいてくる。一虎のキスは甘くてはちみつみたい。トロトロに溶けてしまいそうになる。「風呂一緒に入る?」と聞かれたので、その首に腕を回した。目線の先には一虎のトレードマークの虎のタトゥー。今年は寅年だなぁって思いだして、一虎の首の虎にキスをした。


「なに?甘えたなの?」
「疲れてんの」
「ふーん」
「一虎のせいだからね」

本当はもう一回しても良かったのに、って本音は黙っておこう。きっとまた朝が来ればあなたは私を抱くのだから。そのままお姫様だっこされて、バスルームに運ばれる。入浴剤は疲れが取れるやつにしてね、と言えば、はいはいとまた笑ってキスされた。ちゅ、と音を立てて一虎の唇が離れる。体がうまく動かないのは、一虎が私をこうやっていつも甘やかすからだ。一虎のキスが私の感覚を狂わせるからだ。


「一虎、今年もよろしくね」
「こちらこそ」
「大好きだよ」
「俺も好き」
「知ってるよ」



くすりと笑い合って、二人でシャワーを浴びた。お互いの髪を乾かし合って、夜中なのにアイスを食べて、一緒に歯磨きして、抱き合って眠った。今年も来年もその先もずーっとこの幸せが続きますように。そう願いながら。