タネ
「行ってきます」
誰もいない玄関にそう呟き鍵を締める。
昼よりは暑さも和らいできたがまだまだ季節の変わり目とは言えない。
普段仕事で走り回っているこの街もスーツを脱げばただの日常。
逆に事件が起きまくるこの街は異常なのかもしれない。
行きつけのスーパーに行きカートにカゴを乗せる。
しばらくの張り込みで冷蔵庫の中身も尽きた。
またいつ家を空けるか分からないためできるだけ最低限の買い物をする。
久しぶりに来たスーパーはいつの間にか柿に梨に秋に染まっていた。
「あれれー!佐藤刑事だ!」
声がして少し下向きに振り返る。
少年探偵団のひとり江戸川コナンが立っていた。
「あらコナンくん。お買い物?」
「そうなんだ〜!蘭姉ちゃんにおつかい頼まれて。けど棚が遠くて取れないから店員さん呼びに行くとこなんだ」
普段は頭の冴えすぎる少年だと思っていたが小学生らしいこともあるんだなと少し笑いがこぼれる。
「コナン君、私がとってあげる」
「いいの?ありがとうー!上の麺つゆが欲しいんだ」
棚から商品を取ると「ありがとう!」と言いレジへと向かっていった。
「私も買い物しなくっちゃ」
ひとまず今日のご飯。
そして日持ちのする冷凍食品に野菜に。
パッと食べれるカップ麺とレトルトカレーも忘れられない。
思っていたよりカゴいっぱいに商品を入れレジへと向かった。
結局袋ふたつになった荷物を持ちながら自宅へと向かう。
「あっ!佐藤刑事だー!!」
前から先程の江戸川コナンくんの仲間の子供達がやってきた。
「佐藤刑事買い物帰りかよ!うな重はねーの?」
「ちょっと元太くん!!まずはこんにちはでしょ!」
いつも通りの賑やかさだ。
「こんにちは、みんなは今から帰るとこ?」
「佐藤刑事こんにちは!そうなの!門限だから帰るんだ〜」
沢山遊んだのか子供たちの額には汗が滲んでいる。
「佐藤刑事も帰るの?」
「えぇ、今日はお休みだったのよ。久しぶりに家でご飯を作れるわ」
「そうなんだ〜!また、なに作ったか教えてね!」
「家まで気をつけて帰るのよ」
「はーい!」
この子達は体力つきないのかしら。
そんなことを考えながらもうすぐ家の所まで来た。
「あれ?佐藤さん?」
今日は何度声をかけられるんだろう。
そう思いながら振り返ると、自身の恋人の高木渉が居た。
「なんか今日は沢山声掛けられるなぁ〜」
「え?!?!」
ちょっ佐藤さんどういうことですか?!
そういいながら高木はさりげなく佐藤の買い物袋を持った。
「あら。高木くんったら袋持って。我が家に来る気満々?」
「あっ!!癖でつい!!お邪魔していいのでしたら退勤したので是非……」
彼は真っ赤な顔で笑っている。
事件の多いこの街だけれども。
自分たちが守っている街で沢山覚えてもらって。
声をかけてもらって。
思わぬところに「佐藤美和子」という種を植えてるのかもしれない。