◎わたがし

季節外れの花火大会。今年は運が良いのか休みが貰えた。

猛暑も終わり朝晩が涼しくなってきたこの時期。

心地いい風を感じながら高木は待ち合わせしている佐藤を待っていた。周りは浴衣や甚平、様々な華やかな色で埋め尽くされている。

「結構規模も大きいんだなぁ…」

昨年は捜査一課も駆り出され、高木と佐藤は駅前の警備に当たっていたため祭りの全貌を見ることはなかった。

「わたあめもある、あっフランクフルトもいいなぁ」

高木は屋台をぐるっと見渡した。そんなことをしている間に彼女である佐藤が到着した。

「お待たせ!待った?」

愛しい声に振り返る。

そこには白の生地に紫の花柄の浴衣を着た佐藤が立っていた。

「綺麗ですね…」

思わず高木は呟く。

今日浴衣を着てくるなんて聞いてないわけで。

普段通りの…と言ってもデートの時は動きやすいけど可愛らしい服を着て来てくれる為今回もそう思っていたわけで。

「何言ってんのよ」

佐藤は笑いながら高木の腕に自分の腕を絡めた。

「行きましょ!色んな屋台があって周り甲斐がありそうよ」

屋台を見てニコニコ笑う彼女を見るとこちらまで微笑ましくなるものだ。何から回りましょう〜なんて話していると佐藤がある物を見つけた。

「ねぇ渉、射的があるわよ」

佐藤は店の方に高木の腕を引いた。

ちょっと現役刑事がどうなんですか。

流石にチートじゃないですか。

と、喉まででかかった言葉は飲み込んで。

「流石に厳しくないですか?」

「そんなことないわよ」

いつの間にかお金を払い銃を構えていた。

当たりはおやつの景品から少し離れたところにある小さいパトランプ(回転灯)だ。それも当たりにくいように大きい景品の後ろに潜んでいた。

しっかり焦点を定めた彼女が1発パァンと撃つ。

……ハズレだ。

「美和子さんでも外すことあるんですね」

「投げるわよ」

そんな言葉を発しつつも佐藤は2発目を構えた。

パァン

ピヨピヨピヨピヨ……

パトランプが回り始めた。

「おっ大当たり〜!!」

店の店主がベルを鳴らす。

「やったぁ!!」

彼女は嬉しそうに笑っている。
景品は何種類かと選べたが彼女は大きいゴールデンレトリバーの犬のぬいぐるみを選んだ。

「あれ?美和子さん犬好きでしたっけ?」

佐藤は人形を見つめてから抱きかかえた。

「だって渉にそっくりだもん」

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犬のぬいぐるみで彼女の腕はひとつ埋まり。

反対側の腕も荷物が抱えられている。

「美和子さん持ちますよ」

「えっいいわよ。自分で持てるから」

「そうじゃなくて……」

高木は真っ赤な顔で佐藤を見つめる。

「手を繋ぎたいんですよ」

今にも頭は湯気が上がり大爆発しそうだ。

照れながら言ってみるも佐藤から返事がない。

恐る恐る彼女の方に顔を向けてみると。

「何言ってんのよ 」

彼女の顔も真っ赤だった。

「ほら、それ持って!!」

「はいっ!!」

高木は佐藤のカバンを渡される。

「犬じゃなくてカバンですか?!?!」

つい犬のぬいぐるみだと思っていたが相当気に入ったようで。

「何よ、手が繋げたらいいんでしょ?」

小脇に抱えた犬と手を出す彼女。

その姿に高木は笑ってしまった。

「何がおかしいのよ」

「そんなにその犬気に入ったんですね」

「何よ、もうワタルって名前だってつけたんだがら」

彼氏継続の危機である。


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「花火始まってからは有料席とってあるから場所取りはしなくていいわよ」

屋台をある程度回り終わり、そろそろ場所でも取りいこうかなと思った時だった。

「えっ!?初耳ですよ。高かったでしょう?」

「そんなことも無いわよ。でも来年も再来年も2人とも休みの保証なんてないでしょ?だから今回楽しまなきゃって思っちゃって」

そういいながら佐藤は携帯での予約画面を見せてきた。

「ええぇ…いちばん高い席じゃないですか」

「ボーナス出てたし奮発しちゃった!これは私の奢りね」

佐藤は軽く舌を出して見せた。

彼女のサプライズに高木は「すみません」 と口に出す。

「何がすみませんなのよ、ここはありがとうでしょ。私の方が年上なんだからたまにはこういうこともさせて」

佐藤は口をぷくーとさせている。

そんな彼女も可愛くて可愛くて仕方がないのだ。

「ありがとうございます!」

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花火が始まるとなり2人は予約していた席に着いた。

前に人もおらず広々と寛げる席だ。

「花火はこの正面から上がるそうね」

机の上にフランクフルト、焼きそばを並べる。

佐藤の手には先程買った綿菓子が握られていた。

涼しくなってきたとはいえまだ気温も湿度も少し高い。

綿菓子もゆっくりだが溶けてきている。

佐藤が綿菓子を口に含んだ時少しとけてた部分がほっぺたに付いた。

「美和子さんつきましたよ」

高木は佐藤のほっぺたについた飴を指で取りペロッとなめた。

「ちょっ欲しいならあげるわよ」

「綿菓子だけじゃなくて美和子さんに付いた飴だから食べるんですよ」

「意味わからないから」

佐藤は真っ赤になりながら高木から顔を背けた。

その瞬間花火が上がる。

「かわいいなぁ」

高木のつぶやきは花火の音でかき消された。








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あとがき

お気付きの方がいるかもしれませんがBack Numberさんの「わたがし」を聴きながら書きました。
やっぱり何年も本も読まず創作も離れていたら文の書き方が分からなくなりますね。