【3-2】手紙〜千佳の1〜

香織が俺の家を去ってから幾月が経ったある日。
俺は、千佳の元を訪れた。
涼子から託された手紙を持って。


「こんにちは、岸田ですけど。面会お願いします」
受け付けでそう告げると、用意されているソファに身を委ねて声がかかるのを待った。

季節は秋になっていた。
窓の外を眺めていると、ひらひらと落ち葉が舞っているのが見えた。
夏の間、頑張って青々と茂っていた葉達は、その色を変え、力無く枝から零れ落ちていった。
秋はなんだか悲しかった。
ここ近年、秋はあまり良いことがなかった。
思い返すと身震いがして、思わず立ち止まってしまいそうになる。
俺はしっかり前を向いて生きていかなければならない。
もう一度そう強く思った。

「岸田さん、診察室までどうぞ」
その声で、ふと現実に戻り、今から何をしなきゃいけないか、頭の中で整理し直した。

担当の看護師の後に付いて診察室に入ると、もう何回目かわからないくらい会っている主治医と、向かい合って座っている千佳がいた。

「千佳、元気でやってるか」

千佳の返事はなかった。

千佳の隣に座ると、千佳の横顔をそっと盗み見た。

また痩せたな、千佳。
心の中でそう呟くと、主治医に向き直った。

「お願いします」

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