【3-1】手紙〜香織の1〜

「本当にこれでいいのか」
俺は自分自身にもう一度問いを投げかけた。

「拓哉さん、涼子を、お姉ちゃんを、お願いね。千佳にはまた折りをみて会いに行って話するから」
「香織、待て」
「多分、こうするのが一番だと思うの」
「俺は何も言ってない。俺の、俺の想いは、考えはどうなる」
「だから、ここに居ちゃダメだと思ったの。もうあたしも傷つきたくないし、誰も、傷ついてほしくないから」
「待て、俺とおまえは…もっとこう…いい方法があるはずだから。一緒に考えよう」
「…さよなら、拓哉さん。本当に感謝してる」

そういうと、香織は飛行機の搭乗口へと消えていった。
香織を止める言葉が何も出てこなかった。うまい言葉が何も思い浮かばなかった。

行かせていいのか、本当にいいのか?
俺はまた守るべき人を失おうとしてるのではないだろうか?
しかし、今更何が言える。
涼子、すまない。
俺は間違ってしまった。
また取り返しのつかない失敗をした。
俺は一体どうすればよかったのか。


最終の飛行機が到着するまで俺は空港を離れられずにいた。
ロビーでは人々が出会いと別れを延々と繰り返している。
影の数が段々と少なくなり、最後の別れを目にしたところで俺は空港をでた。

山手の空気は少し冷たかった。
俺は、もう誰も帰ってこない家へと帰っていった。

2006年の夏。18歳になった香織は俺の元を離れて南へ向かった。

飛行機の中で、香織は、涼子からの手紙をずっと読んでいたそうだ。
何度も何度も、もう涙が枯れるかと思うほど泣き、それでも読まずにはいられない想い、感情の揺れ。
申し訳ないが俺には想像がつかない。


その手紙は、今現在でも大事に持っており、読み返すこともあるそうだ。

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