幾星霜の物語





 今年の春に高校2年になり、今の季節はもう秋。茜色をした楓の葉が木を彩り、地面を温めている。みんなが卒業後の進路を決めて、そのための準備をするなか、私は何もしていない。何かをする気力がわいてこない。
 それを理由にすれば許してもらえるわけじゃないのはわかっている。でも、本当に何もする気が起きない。
 今日、学校でやらされた職業適性検査。結果が何だったのかは覚えてないけれど、そこに書いてある職業に少し興味が出た。ただ、それを将来の夢とするかは別の話。この先その仕事を続けていけるのか、それが生涯の仕事でいいのかはわからない。
 自分が満足するほどのたくさんの経験を積んでから、ということは現実的に多分不可能。人生はあまりに短い。
「私は、どこに在るんだろう」
 誰に言うためでもなく、ただ、何となく吐き出す。立ち止まって空を見上げると、私の心象風景とは違う、綺麗な青空が広がっていた。
 ぼんやりとその場に立っていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。声がした方を見ると、空と同じ髪色をしたネロがいた。
「……部活は?」
「部活は今日は休み。やけにしんみりしてっけど、何かあったのか?」
「別に。ただ、感傷に浸ってただけだよ。担任の髪の毛みたいで儚いなあ、って」
 ネロは風で巻き上がった落ち葉を見て噴き出し笑いをした。
「ネロ。失礼だよ」
「お前が言ったんだろーが」
「まさかこんなにツボに入るとは思わなかった」
「仕方ねえだろ。だって、担任の……フッ」
 笑いすぎなほどネロは笑いをこらえるように手で口許を覆いながらしばらく笑い続ける。息を一つはいて涙を指で拭った。ネロのツボがわからない。
学パロ(フォル学なし)
授業で職業適性検査をやったけど、それでも将来が決めれない賢者様
「"わたし"は今 どこに在るの」と



踏みしめた足跡を 何度も見つめ返す



枯葉を抱き 秋めく窓辺に


結露した窓を指でなぞる(ただの線)
かじかんだ指先で 夢を描いた


進学か就職に必要な力を持っているが、なかなか進路を決められない
翼はあるのに 飛べずにいるんだ


将来を決めたとしても、別れるのが嫌だと感じる
ひとりになるのが 恐くて つらくて


今までのことを思い出す
優しいひだまりに 肩寄せる日々を


受験勉強を始める
越えて 僕ら 孤独な夢へと歩く



サヨナラは悲しい言葉じゃない



それぞれの夢へと僕らを繋ぐ YELL



ともに過ごした日々を胸に抱いて



飛び立つよ 独りで 未来つぎの 空へ



(夢落ちで、賢者様はここで目が覚め、ガバッと起き上がる。夢の記憶がはっきりとある)


賢者の書をまとめる
僕らはなぜ 答えを焦って


自分が誰なのか、何をしたいのか分からなくなる
宛ての無い暗がりに 自己じぶんを探すのだろう


写真立てに入っている笑顔で映り込んでいる自分を見て、写真立てを伏せる
誰かをただ 想う涙も 真っ直ぐな 笑顔も ここに在るのに


誰かに言われた客観的な評価を"自分"として語る
"ほんとうの自分"を 誰かの台詞ことば
繕うことに 逃れて 迷って



ありのままの弱さと 向き合う強さを
つかみ 僕ら 初めて 明日へと 駆ける



サヨナラを誰かに告げるたびに 僕らまた変われる 強くなれるかな


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