思わぬ再会

任務の行き帰りに歩く王都はいまだに慣れない

人々の蔑む視線がヤシロに突き刺さるからだ

遠方の任務に当たる時同じ団員達は平界までは共にいるのだが王貴界に入るとそそくさと居なくなる

まぁ仕方の無いことかと割り切りさっさと紅蓮の獅子王本拠地に戻ろうと駆け足になると声をかけられた

たまたま通りがかったユリウスが声をかけたのだ


「お久しぶりです、ユリウスさん」

「うん、本当にね、中々魔法を見せに来てくれないから寂しかったよ」

「そんなこと言ってましたっけ?」

「忘れてるのかい!?酷いなぁもう!!」

「すみません」


本気で怒っているわけではないが、何となく困らせてみようという悪戯心から年甲斐もなく駄々をこねるユリウスにヤシロは困ったように笑う

そんなユリウスはニヤリと面白いものでも見せたいかのように笑った


「ヤシロ、これから時間はあるかい?」

「これからですか?任務の報告をしないとなので1度本拠地に」

「じゃぁとっとと済ませよう!!実は君に会わせたい子がいるんだ!!」

「会わせたい子・・・?」

「きっとヤシロも灰色の幻鹿に入りたくなるよ!!!」


ウィンクをしてみせてニコニコ笑うユリウスはヤシロの手を掴みグイグイと紅蓮の獅子王本拠地に向かう

傍から見たらユリウスの奇妙な行動に周りの人達がザワつく

それを気にもせず引っ張るユリウスに申し訳なく思いながら、それでも自身を拒まず受け入れるユリウスを嬉しく思った

***

団長に報告した後慌ただしく掛けていくヤシロが気になり着いてきたフエゴレオンは目を見開いた

ユリウスとヤシロが仲睦まじく歩いていくのだ

いつの間にあんなに仲良くなったのだろうかと不安を抱きつつフエゴレオンはコソコソと"魔"を鎮めて2人を尾行する

だがその程度のことで気づかないユリウスではない

いずれ魔法騎士団団長にまで上り詰めるフエゴレオンではあるがまだ未熟、変に乱れる"魔"にユリウスはクスクスと笑う

そして"魔"に関してはよく分からないヤシロもフエゴレオンの"氣"を感じて何をしているのだろうと気になって仕方がない

"氣"とは人の目線、動き、気配等の人から発する生体エネルギーを総合したようなものだ

ほぼ感に近い高度の技術ではあるが今までの経験上無意識に身についていたヤシロはフエゴレオンの視線からそこにいると気づいてしまった

そんなに見るなら声をかければいいのに何故来ないと思うのだが隠れているようなので黙っている

そんな事は露知らず灰色の幻鹿本拠地に向かっている2人をみてもしやヤシロは・・・と1人不安に思うフエゴレオン

確かにまだ団員達の中でヤシロを認めている者は少ない

差別主義の強い貴族が大半を占める紅蓮の獅子王の団員達は異国人のヤシロが気に入らないのを知っているのだ

だがヤシロとは友人であり恩人であり仲間だ

団員達が認めるまで自身が頑張ろうと思っていたが団を移籍したいと思うまで思い悩んでいたのではないのか

考えが悪い方向に向かっているフエゴレオンを他所に2人は灰色の幻鹿団本拠地の裏手の方に向かう

一体何処に

駆け足で近づき2人が曲がった角を覗き込むと座り込む少年の目の前で拳を作り仁王立ちするヤシロとそれを宥めるユリウスの姿を見た

座り込む少年は焦ったように頬を抑えている

若干腫れているようにも見えた


「何をしているんだヤシロ!!?」


現状に追いつかず隠れていたことも忘れ大声で突っ込んでしまった

***

ヤシロは驚いていた

もう二度と会えないと覚悟していた幼馴染が目の前で素振りをしていたからだ

ヤシロに気づいた幼馴染、ヤミ・スケヒロは驚いたように目を丸くすると直ぐに嬉しそうに笑った

少年らしい屈託のない笑顔だった

その表情にぐっと混み上がるものを抑え込みヤシロは息を吐く

再会を喜ぶ前にヤシロは確認しないといけないことがあったのだ


『介大、お前に聞きたいことがある』

『おう』


ヤシロが話した言葉はクローバー王国のものでは無い

2人の母国の言葉だ

そんな様子を見て積もる話もあるだろうとフエゴレオンを回収して2人きりにしてあげようと思い立ちユリウスがヤシロと、そしてヤミの顔をもう一度見た時ふと思考が止まる

ヤミの顔が青ざめていた

黙ってヤミに近づくヤシロは何処か怒っているようにも見える

ちょっと待って、その一言を言う前にヤミはヤシロに殴られていた


「何をしているんだヤシロ!!?」


ついつい声を出したのだろうフエゴレオンが慌ててヤシロを抑え込む

だが何分ヤシロは力が強い

破天荒な姉がいるからと身体も鍛えていたフエゴレオンよりも力が強かった

少し心が挫けそうになるが何とか宥めヤミから距離をとる

ユリウスは膝をついてヤミを心配していた


「落ち着けヤシロ!何をそんなに怒っている!!」

「離せフエゴレオン、コイツは一度灸を据えなければならない!!」

「待て!頼む落ち着いてくれ!!」


怒りを隠さないヤシロにフエゴレオンは落ち着くように叫ぶ

ヤシロはふう、と息を吐いてフエゴレオンに向き直った


「騎士団入団試験の時ジャックから聞いたんだ、王貴界を騒がしている盗賊の頭が異邦人だと」

「・・・」

「嘘だと思いたかったよ、スケヒロ」


罪は償え

そう言って刀を抜こうとするヤシロを何とか抑える

ヤミは震えていた


「落ち着いてくれヤシロ、ヤミは今この国に貢献するという形で罪を償っている」

「甘いですよユリウスさん、罪を犯したのならキチンと罰を受けなければいけない」

「だから今罪を」

「甘やかすなと言っているのですよ私は」

「とにかく帰ろう!その者の処遇はユリウス殿に任せるということにして!そうしようヤシロ!」

「そんなことになったらアイツは何も償わずにっ」

「俺はフエゴレオン・ヴァーミリオン!ヤシロと同じ団に所属している!また会おう!」


ズルズルと引きずり去っていく二人を呆然と眺め見えなくなったところでくくく、とヤミが笑う

打ちどころでも悪かったのだろうかと心配になったが杞憂なようだ


「あー、強烈な照れ隠し」

「え?」

「泣いちゃいそうだから適当ぶって殴ったんすよ」

「ず、随分と暴力的な照れ隠しだね」


殴られたのに安心したように笑うヤミに異国の事はよく分からないと思ったユリウスだった

一方走って紅蓮の獅子王本拠地に向かうヤシロにフエゴレオンも負けじと追いかける

ヤシロが一切"魔"を使わないのでフエゴレオンも使わなかったのだが本拠地に着いた頃には息が上手く出来なかった

力でも負けるし体力でも負けた

いや、ヤシロはまだ何処か怒っていたようで走っている間ずっとフエゴレオンに文句を言っていたのだが走りながら話すなど余計体力を使うだろう

自分は魔法が無いとこんなにも弱いのか

その事実がフエゴレオンにのしかかる

鍛えよう

そうフエゴレオンは決心したのだった

前へ次へ
戻る