イトナ再び
夜中、動きやすい格好・・・学校指定の体育着で全員目的の建物に近づく
今まで鍛えてきた暗殺スキルがまさかこんなこそ泥みたいなことに役立つとは思いたくもなくなんとなく複雑な気持ちである
建物敷地内は結構植物などで隠れる場所があり、盗みやすそうだ
「ねぇ、あれ」
潮田が指差す方を見て皆が頭を抱えた
恐らく同じ考えで、ここに来たのであろう殺せんせー
だがその格好はどう見ても"これから泥棒します"という格好で、どこからどう見ても泥棒である
撫子は嘆かわしいと呟きながらふと、下着があるであろう物干しの方をみる
するといたのだ
「あれ、真犯人じゃ・・・」
手足を黄色くした犯人がそろそろと物干しに近づく
殺せんせーはそれを見逃さず、犯人に襲いかかった
だがその絵面は泥棒が下着の取り合いをしているようにしか見えない
「あれ?」
撫子と不破が首を傾げた
「普通、泥棒ってバレないように盗むよね」
「うん、なのに何で被害者は皆泥棒の特徴を知っていたんだろう」
「そもそも何で手足黄色にしてんのかな」
「そもそもこの場所も変だよ、服を夜に干しちゃうのは私もやるけど、下着だけだなんて変だもん・・・それにシーツは晴れてる日に・・・」
撫子はそこでハッとする
明らかにおかしいこの状況
こんなに外が騒がしいのに中から人ひとり出てこない
胸騒ぎがする
殺せんせーが丁度真犯人の顔をみて驚いた時だった
「殺せんせー!これ、罠だよ!!」
不安な気持ちが一気に襲いかかり撫子は声を張り上げる
が、手遅れだった
勢い良く物干しが倒れていくと思うとシーツが壁のように四方を取り囲む
その隙に逃げ出した男には身に覚えがあった
「あの人!」
「烏間先生の部下だ!」
「なんであの人が」
皆が驚く
きっと殺せんせーも驚いただろう
すると少し離れたところから声が聞こえた
「彼には上にお願いして手伝って貰ったんだよ」
「シロ!」
「まさか」
「君たちのお陰で結構な弱点を収集できた、どうだい?身近な人物に陥れられ、急な状況変化で相当判断力が鈍くなったはずだ、あぁ、それは私の服と同じ対超生物用の繊維で出来ているからきっと今4本くらいは触手削れたかな?」
予期せぬシロの登場
ということはだ
「そして、唯一の出口、天井にはイトナ、君だ」
三日月を背後に現れたイトナ
イトナは迷うことなく殺せんせーに攻撃を仕掛ける
イトナの触手には対殺せんせーでできたものが取り付けられていた
「まって、あんなの付けてたらイトナくんが」
「彼も後が無いからね、必死なんだよ」
「そんな」
あんなものを付けていたらイトナの触手も溶けてしまう
何とかして止めないと
でもこの状況だ、どうにもできないのも事実
でも殺せんせーは不敵に笑っていた
「イトナくん、残念ながら君の攻撃は前回とまったく変わっていない」
「!」
「変わっていないのなら簡単に避けることができますよ」
狭い四角の中でも構わず避けきってみせた殺せんせー
イトナの表情が瞬く間に怒りに変わっていく
殺せんせーは諭すように言う
E組で皆と一緒に私を殺しませんか
皆一緒に学んで一緒に考えて暗殺しています
1人では何も出来ないのです、と
殺せんせーの説得ではやはりイトナは納得しない
イトナがまた再攻撃をしようとした時だ
「残念だよイトナ」
発砲音と共にイトナの触手が弾かれる
シロは落胆しているような声でイトナに言う
君はもういらない、国も成果のない研究に費用は出さない
君はもうおしまいだ
イトナが引き止める声も聞かず、シロはいなくなって行く
イトナの顔にうつるのは絶望
悲痛な声を上げると、そのまま夜の闇へと消えていった
「・・・」
「殺せんせー・・・」
「イトナくんは今とても危険です、早くどうにかしなければ」
殺せんせーは冷や汗をかいていた
***
携帯ショップなどが破壊されているというニュースが次々と速報で流れている
撫子は最後に報道された北三門に来ていた
『城戸さん、どう?』
「ごめん、やっぱりわかんない・・・てか皆さん私の直感に頼りすぎじゃない?」
『だって目星つかない以上城戸さんに頼るしかないじゃん』
「あのねぇ」
「まぁまぁ、頼りにしてるよ、城戸さん」
撫子と共に行動している岡野は苦笑いを浮かべていた
とにかくここにいても収集はなさそうだ、とその場を立ち去ろうとした
「隠れて!」
現在撫子達がいるのは屋根の上
撫子が隠れるよう言うと隠れた反対側から数人、こっちに向かってきた
「これは・・・」
「近界民、ではなさそうだな」
そこに居たのは三輪、加古、二宮、そしてその3人をまとめている長身の男
撫子はその男に身に覚えがあり内心「げ」と思っていた
早くいなくなってくれ
撫子はそう思いながら息を潜める
三門市まできたこの騒動を、近界民のものではないとはいえボーダーが放置するわけにはいかないと出て来たのだろう
一般人が屋根の上など明らかに不自然だ
もし見つかり、取り調べなんかになってイトナのこと出ていったがバレでもしたら大変だ
『城戸さん、岡野さん!分かったことがあるの!』
「!!!」
タイミングが悪い
携帯をスピーカーにしていたため、聞こえたかもしれない
返事をせず、聞くこともなく電源ボタンを押し、携帯の電源をきる
バクバクと悪い意味で心臓がうるさい
岡野も口を両手で抑え、目を見開いていた
「なんか声しなかったか?」
「さぁ・・・」
バレるな、バレるな
撫子達は一心にそう願う
「・・・あ」
「っ」
見つかった
だが2人を見つけた男は何を思ったのか何か探すような素振りを見せると特に何も無いな、と自然に呟いて戻っていく
そのままその場にいたものを引き連れ場所を移したのだ
「み、見逃した、の?」
「・・・」
撫子は男を知っていた
それもあるのか胸をざわつかせるような嫌な感覚が止まらない
だが今はイトナだ
『お2人とも大丈夫ですか?』
「急に切ってごめんね」
「それで、分かったことって?」
このざわつきを一刻も早く忘れたくて、携帯の電源をつけ律に問いかける
イトナの素性がわかっのだと言う
元々父親が小さな工場を運営していたらしい
だが、中小企業の経済難や相次ぐ職員の退職で工場は破綻
イトナを置いて父親は出ていったらしい
恐らく携帯ショップや電化製品を取り扱う店を破壊している理由はここからだろう
今、イトナがいるかもしれないと目星をつけその工場に向かっているらしい
「行こう」
「うん」
撫子と岡野は画面上に出た地図を見て一目散に走りだした
***
走っている間に状況が変化した
案の定イトナはその工場におり、殺せんせー達が説得しに行ったのだが途中シロが現れ「後始末」と称してイトナを連れ出したようだ
殺せんせーが一足先に追っていったようだ
撫子達もそちらに向かう
目視できるところまで来ると一旦止まった
殺せんせーのあたりはライトに照らされ、よりわかり易かった
車に括りつけられている網に捕らわれているイトナ
イトナに向かわている数々の銃
それを庇う殺せんせー
殺せんせーは自分に向かってこない攻撃には鈍感だ
だが、鈍感とはいえ動きが鈍すぎる
そこで、あの照らされているライトがいつぞやにシロが使っていた対殺せんせーのものだとわかった
なら話は早い
チラチラと既に同じ結論に至った仲間達がライトの付近にいるのを確認する
「出遅れるわけにはいかないよね」
「いそごっか」
撫子達も駆け寄った
「てめぇが捕まると俺らが何とかしねぇといけねぇだろうがタコ!」
寺坂が文句を言いながらライトと一緒に人まで蹴りおとすのを合図に皆次々と襲いかかる
撫子は近くにいた男を蹴り飛ばし、ライトを地面に叩きつける
思いの外楽しいと思い始めたところで狭間に頭を叩かれた
「痛い」
「アンタがライト壊している間にシロ逃げたわよ」
黙々とライトと人を襲いかかっていたため気づかなかった
撫子は慌ててみんなに駆け寄る
丁度意識を取り戻したらしいイトナに殺せんせーは声をかけるが裏切られたショックにより呆然とし言葉が聞こえていないようだ
殺せんせー曰く早くイトナから殺意を消して触手を取らないと取り返しのつかないことになるらしい
「おいタコ、コイツ俺らが借りるぜ」
放心状態のイトナを全く気にせず襟首を掴み立たせる
「行くぞ!」
「え、何処に」
「あ?そりゃぁ、あー・・・」
「ノープランかよ!」
「村松んちでいいんじゃない?」
「お腹空いてるとイライラしちゃうしね」
「じゃぁ村松んちいくぞ」
寺坂が引っ張ったため何か策があると思いきや全くのノープラン
でも、それが寺坂らしいと撫子は思う
「あ、そうだ」
狭間がいそいそと何かを取り出しイトナの頭に巻く
対殺せんせーの素材で出来た布だ
これでしばらくは大丈夫でしょ、と言う
さて、これでノープランのイトナ説得の準備ができたのだった
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