イトナ説得ノープラン
村松の家はラーメン屋である
普段ならもう閉店している時間のため、今は貸切状態だ
開店していてももしかしたら貸切状態だったかもしれないが
「どうだ?まずいだろ?」
「おいこら」
村松の家のラーメンは正直美味しいとは言いがたかった
古い味付けなのだ
「醤油と化学調味料で誤魔化し、具材はネギと薄いチャーシュー、メンマ、そして真ん中にデカデカと乗せられた鳴門、これぞとばかりの一昔前のラーメン・・・」
「け、結構詳しいのね・・・」
イトナがここぞとばかりに饒舌になり若干驚く
啜った時に頬についたスープをティッシュでふいてやり、それをゴミ箱に向かって投げる
外れた
「残念」
「お前本当にこれ苦手だよな」
撫子の外したゴミを入れてやる吉田
店を汚すな、と村松は笑いながら文句を言う
"友達"独特と空気が、イトナにはむず痒かった
「腹いっぱいになったろ、次は家来いよ」
吉田が立ち上がり、自宅へ連れていく
吉田の家はバイク屋だ
店の裏には小さなサーキットがあり、バイクを試し乗りできるようになっている
吉田はイトナを後ろに乗せ、走っていた
「いいの?まだ中学生よ?」
「確か公共の場所じゃなくて私有地なら車もバイクも大丈夫なはず」
「そういや小学校の時教師が校庭で車の運転の練習してて問題なったわ」
「何それ面白い」
馬鹿みたいな話をしていると丁度イトナがバイクから吹っ飛んだ様子が見えた
吹っ飛んだ
「吹っ飛んだー!!?」
「イトナくーん!!?」
何してんだ!と駆け寄りイトナの安否を確認する
幸い垣根に突っ込んだおかけで怪我はないようだがイトナの様子がおかしいことに気づく
痛かったのか、と心配したが状況はもっと最悪
触手がまた暴走し始めたのだ
「俺は強くならないといけない、お前らなんかとつるむ時間なんて・・・」
「なんかって何だよなんかって」
ブツブツと時間がないだの弱い奴らなどいらないだの言うイトナに容赦なくゲンコツを落とした寺坂
そして寺坂は続ける
皆コンプレックスなんて山ほどあるのだと
村松は今は無理でも継ぐ時に店のラーメン美味くするために研究中だし、吉田と一緒に経営についても学んでいる
城戸は城戸で毛ほどにも見せないが父親に認めてもらいたい一心で自分の出来ることを増やそうとしている
狭間も今、と続けたところで狭間が寺坂の頭を殴った
どうやら知られたくないようだ
狭間の努力を知りたいと思う村松と吉田
ちなみに撫子は知っている
というよりも、だ
「寺坂くん、結構私達のこと見てるのね」
「ったりめーだろうが!てめぇ等のリーダーだからな」
「一番バカがリーダーとか」
「うるせー狭間!」
話が脱線し始めた当たりでようやくイトナが「俺は、どうすればいい」と呟いた
シロに拾われてから今まで、殺せんせーを殺すことだけしか考えることができなかった
どうすればいいのか、わからないのだろう
「んなもん、一緒にタコ殺しにいきゃいいんだよ!何十回何百回失敗しようが卒業までにたったの1回成功すりゃ俺らの勝ちだ」
「ずっと、また殺すことを考えるのか」
「何でだよ、こうやって俺らとバカやってりゃいいじゃねぇか」
「バカやって楽しんで、皆で一緒に殺せんせーの殺し方考えよ」
撫子がいい所を横取りしたのでとりあえず頭を叩く事にした
そんな面々を見てイトナはようやく口元に笑みをこぼした
イトナから殺意が消えたのだ
「今なら安全にイトナくんから触手を外せます、イトナくん、外し終わったらもちろんE組の仲間になってくれますね?」
遠くから見守っていた殺せんせーがピンセットを持って近付いてくる
イトナははぁ、と息をついた
「早くしろ、兄弟設定はもう疲れた」
イトナがやっと仲間になったのだった
皆で喜んでいる中
少し離れたビルの屋上
「アレが上層部から聞いた"地球破壊超生物"か」
「この前会った秀次の知り合い、あの中にいないか」
「なんか楽しそうに見えるけど・・・もしかして洗脳?」
「あの子供たちの関係は資料に載っているだろう、後でちゃんと目を通してみよう」
三輪、加古、二宮、そしてもう1人、長身の男
先程から撫子達を尾行していたのだ
ボーダーの戦闘体では、姿を消すことができる
遠くてもある程度の距離なら見えるし、臭いも発せられないので殺せんせーに見つからずに尾行することはそれなりに可能なのだ
三輪は笑う撫子を見てぎゅ、と拳を握る
「あれは、近界民なんですか?」
「いや、地球で作られた生物だそうだ」
近界民ではない
それでも、撫子に、好きな人に危険を及ぼすだろうものは容赦しない
「今日は一旦引こう」
「了解」
「・・・はい」
男は破壊超生物を睨む三輪に本部に戻るよう促し、そしてもう1度そちらをみる
綺羅々・・・
男は狭間を見ると少しだけ目を細める
大切な人を守りたい
それは男も同じなのだ
「撫子?」
キョロキョロと周りを見出す撫子を不審に思ったのか狭間が声をかけた
「どうかしたの?」
「うーん、気のせいかな?」
見られていた気がした
だが既に四人はいない
撫子は気のせいだと思い、イトナの触手がすべてなくなるのを確認すると自宅へと帰るのだった
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