模擬戦観覧

東に連れてきてもらった模擬戦スペースとやらに、先程見た記憶のある髭面の男とはまた別に撫子よりも身長の低い男が立っていた

東に着いてきた4人を見つけ太刀川がよう、と手を挙げた


「さっきぶりだな、俺は太刀川慶」

「今日はわざわざ実戦を見せていただけると聞きました、ありがとうございます」

「別に最初からやる予定だったし気にすんなって、あそこのモニターで大画面で見れるからとりあえず適当に座ってろよ」


太刀川、と呼ばれハイハイと言った太刀川を見送る

恐らくあの小さい男が風間と言うのだろう

太刀川の様子からして年下に敬語は使わなそうなのであっちが歳上なのか、もしくはかなりの実力の持ち主なのか

今まで見てきた殺し屋達よりはまだまだ弱そうという感想が強くなってしまうのが現状だが正宗がわざわざ指示して来たのだ、弱いわけではないはずだろう

太刀川慶VS風間蒼也と画面に表示され、ビル街の様な場所に2人が転送されていた


「おぉ」

「SFかよ」

「まぁ、私らのがよっぽどファンタジーでしょ、殺せんせー相手している分」


コイツらは、とジトリとした東の視線をスルーし画面を見続ける

注目したのは風間の戦い方だった

正しく殺し屋と言っても過言ではないような戦い方に皆が殺せんせーを殺す為の技術として取り入れようとしていた

勿論太刀川も強い

だが、余りにも現実離れしていて殺せんせーを殺すには参考にはできなかった

ふと、殺せんせーを殺す事ばかりに気を取られている事に気付きボーダーに何しに入ったのかと苦笑いを零した

気付けば模擬戦は終わっており、10本勝負で太刀川6風間4で太刀川の勝利になっていた


「どうよ」

「風間さんの戦法は使えると思った」

「でもあの機動力出すのは難しいだろ」

「そこなんだよねぇ、めっちゃ鍛えるしかないかぁ」


撫子達の元に戻ってきた太刀川はワイワイと話している様子を見て不思議そうにみる

まるでトリオン体で戦わない前提みたいな会話をしている

もしや知らないのだろうか

なら教えてやろうじゃないかとニコニコと近づいた


「よう、どうだった」

「太刀川さん」

「何かSFみたいで現実味が無かったです」

「まぁ、確かにそうかもなぁ、だいたい戦うのはあのデカブツだし」

「だいたい?じゃぁやっぱり人相手でも戦ってりするから人を殺す訓練があるんですか?」


太刀川は口元を引き攣らせた

余計なことを言うなと撫子を叩く寺坂の言葉は聞こえない

人を殺す?いや、俺達が切っているのは近界民だ、人ではない・・・


「それをお前達が知る必要はない」

「風間さん・・・」

「東さんの知り合いだか知らないがまだ正隊員ですらない者に教えられる事はない」

「じゃぁ勝手にそう思ってます」


ギロリとした風間の視線も全く気にせずニコニコと笑う撫子

え、何これ怖いと寺坂は狭間の方を見た


「あの子ほら、基本ボーダー嫌いだから」

「理由察した理解」

「ファザコンが勝手に当たり散らしてるだけか」

「アンタねぇ、そんなピリピリしてると辞めさせられるわよ」

「仕方ないじゃん!!この人達は私よりも一緒の空間にいる時間が長いんだよ!!羨ましいじゃん!!」

「アンタが当たり散らしていいのは忍田だけよ、その他は我慢しなさい」

「これから一緒にいれるだろう、落ち着け」


何の話だかはわからないが自分の師である忍田の名が出てきて反応する太刀川

そういえばエレベーターで会った時も忍田を敵視していたなと思い出す

先程の敵へ向けるような笑顔ではなく悔しそうな表情になった撫子を見て風間も困惑気味のようだ


「待て待て、忍田さんが何したんだよ」

「私の人生の大半から父を奪った最低野郎です」

「待って、本当に忍田さん何したの!?」


気にはなるが理由は怖くて聞けない

東も黙って視線を逸らすだけだった

そんな時、スペース内がザワついた

正宗が入ってきたからだ

何故司令が、と淀めく中コートを羽織っているし出る所だったのだろうか、と風間が声を発しようとする


「おとーさん!!」


前に撫子が正宗に飛びついた

信じられない光景に驚く風間他ギャラリー

太刀川も娘とは知っていたとはいえ困惑気味だった

後は慣れ切ったのか何時もの面々と東は無反応だったり苦笑いだったり


「急にこんなことになってしまったが感謝する」

「いえ、それは構わないのですが・・・」


お父さんと言って抱きついた挙句正宗は頭を撫でている

風間は意味がわからず卒倒しそうである


「司令、あの、彼女とはいったい・・・」

「娘だ、あぁ、だからと言って私のコネで入れた訳では無い」


娘という点もコネという点も信じることは出来なかったが風間は大人しくうなづいておく

撫子はそんな反応の風間にムッとして何かを言おうとしたがその言葉を言うことは無かった


「私は一度ここを離れる、何かあれば忍田に言いなさい」


そう言い東とも一言二言会話し撫子達を連れて模擬戦スペースから出ていく


「へー、あの子司令の娘だったんだ」

「・・・なら何故今までボーダーと関与していなかった」

「え?んー?まだ中学生でしょ?嫌だったんじゃない?」

「小学生でもやっているのにか」


納得出来ない、納得したくない

風間はただただ居なくなった撫子を睨むことしか出来なかった

***

「お父さんさ、なんであのタイミングで私の紹介したの?」

「娘の紹介する事はおかしい事か」


撫子は助手席に座り、後ろに狭間、寺坂、イトナが座る

ニコニコと正宗に先程のことを聞くがはぐらかされた


「お父さんあれでしょ、私の入隊がどうであろうとコネって思わせて周りに反感買わせてさっさとボーダー辞めさせようって思ってんでしょー」

「・・・」

「ビーンゴ!でも私そういうの平気だから無駄だよーえへへー」

「アイツ実は父親嫌いなの?」

「父親大好きスーパーファザコンだけど誰も父親の意思通りに動く人形とは言ってないわよ」

「あ、なるほど」


車内には正宗の重たいため息が響いた

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