SS部屋


リハビリも兼ねて気まぐれに更新します。800字/ジャンル雑多。
タイトルは診断メーカー『お題ひねりだしてみた。』様より。

2022/07/30(Sat)

「もしも、私が貴族の生まれではなかったとしたら……それでもフレン様は私と婚約してくださいましたか?」
 顔色を伺うのは怖くてできなかった。今の環境でも私は十分満足した生活を送らせてもらっているというのにこんなことを聞くのは我儘だから。
 所詮、親が決めた政略結婚というものだった。騎士団長の嫁が私に務まるとは到底思えなかったけれどここまで育ててくれた両親の為にも自分が出来るのはこれくらいだと思ったから婚約を決めた。私は今のフレン様との関係に不満はないし、むしろ満足している。きっとお仕事でお疲れなのにフレン様は忙しい合間を縫って私に会いに来てくれる。つまらないであろう私の話も真摯に聞いてくれて、私がフレン様のお仕事について尋ねれば丁寧に答えてくれる。そんなささやかな時間が私は好きだった。
 けれど、どうしても時々不安になってしまう。今の関係に満足しているのは私だけで本当はフレン様は嫌なんじゃないだろうか。親の勢いに圧されて本人が望んだ結婚ではないのではないだろうか。フレン様が嫌ではないか、ただそれだけが心配だった。
「……どうすれば伝わるんだろう」
 ぽつりと小さく呟いたフレン様はおもむろに私の手を取る。するするとシルクの手袋を外されたかと思ってきょとんとしていたら手の甲にキスをされた。突然のことに驚いて固まる私に手を握ったままフレン様は視線を持ち上げる。前髪からのぞく碧眼がまっすぐ私を射貫いた。
「貴族だから平民だからとかじゃない、他でもない君だから一緒になりたいんだ。本当は――今すぐにでも君の心も身体も僕のものにしたい」
 でも、まだ婚約期間だからここまで。
 そう言ってフレン様は言葉を失う私の頬にキスをした。なんだか信じられないような発言を聞いたような気がする。けれど耳に残ったリップ音が、頬に残ったぬくもりがこれは現実だと教えてくれている。
 みるみる内に真っ赤に染まる私にフレン様は満足げに微笑んだ。
▼読んでも読まなくてもいいあとがき

貴族の夢主とフレンの話。実は政略結婚だと思っているのは夢主だけで本当はフレンが頑張って結婚までこぎつけたという夢主→←←←フレンという構図のお話。騎士団長とはいっても平民と貴族の格差は簡単には埋められない。夢主はエステルの話相手に選出されるような生粋のお嬢様。
例えばの話をしてみようか。 TOV/フレン・シーフォ
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