SS部屋


リハビリも兼ねて気まぐれに更新します。800字/ジャンル雑多。
タイトルは診断メーカー『お題ひねりだしてみた。』様より。

2022/08/21(Sun)

「いいよ清光。そこまでやらなくても」
「だーめ。身だしなみは大事だっていつも言ってるでしょ」
 そう言って主の手を引くと分かりやすく口をへの字に曲げる。どちらかと言えばおしゃれには無頓着な主。「面倒」と顔に書いてあるのがありありと分かったけれど、俺が全く手を離さなかったのを見て渋々手の甲を差し出した。俺はにっこりと笑みを浮かべてポケットから愛用のネイルを取り出す。色は勿論、赤。
 主の細い指にそっと手を添えて薄桃色の爪に真っ赤なネイルを塗っていく。俺の爪とおんなじ色。片手を塗り終わったところで主の声が俯いた頭上に振ってくる。
「たかだか審神者同士の定例報告会だよ。そこまで気にしなくて思うんだけど」
「……じゃあ、これはおまじない」
「おまじない?」
「そ、主が無事に報告会終わらせられますようにって」
 定例報告会に俺たち刀剣男士は参加出来ない。だからそこでどんなことが行われているのかはさっぱり分からないけれど、政府から通達が来ると主の顔が強張るのを俺は知っている。そして報告会から本丸に戻ってきた夜、ひとり布団の中で嗚咽を呑み込んで涙を流しているのを知っている。まあ、主は俺たちに気づかれないようにしているつもりなんだろうけれど。
 だから、これはおまじない。今度は主が泣かずにいられますようにって。俺がついてるから負けないでって。
「報告会頑張ってね、主」
 きょとんとした顔で瞳を何度か瞬かせた主はやがて目尻を下げてくしゃりと笑った。
「ほんと清光には敵わないなあ」
 ……なーんて、そんなの都合の良い口実に過ぎない。
 その報告会に主を狙ってる男がいるかもしれないでしょ。だから牽制してるの。主は俺のだよって。
けど、そんなこと言ったらきっと主は困った顔をするだろうから言わない。あーあ、早く主が俺の気持ちに気づいてくれたらいいのに。
 そんな俺の気持ちも知らずに主は真っ赤に染まった自分の爪を見て「ありがと、清光」と微笑むのだ。

▼読んでも読まなくてもいいあとがき

清光ってどうしても激重感情持ってる男の子だと思っているのですが私だけでしょうか……。
安定に毎回恋愛相談してたら可愛いですよね。
そのうち報告会に殴り込みに行くとは思ってます。
いい加減思い知ればいいのに、 tkrb/加州清光
top