レース後は張り詰めた緊張から解き放たれ、その反動と興奮で異様に気が昂ると言っていた。要するにムラムラするのだそうだ。血を沸き立たせる熱を帯び、一線を超えれば死へと繋がる競り合いをしているのだからまあ分からないと思った。

 「んっ、」

 壁に押し付けられ、荒々しく口付けをされた。
 帰ってきてろくに挨拶もしていないし、なんなら玄関のドアだって半開きでいつ誰が見るかもわからない状況だ。それでも構わず舌を絡ませあった。熱い。熱が伝わり、ゾクゾクとする。智幸の武骨な手が触れている頬が、熱を持って溶けそうになる。そうだ、いっそそのまま溶かして欲しい。原型が無くなるまでめちゃくちゃにして欲しい。
 そのままおもむろに下に動かされ緩く愛撫されドロドロと溶解するように、腰が砕けた。咄嗟に愛撫をしていた手で腰を支えてくれたから膝を付かずにすんだ。
 たったこれだけなのに情けないくらいに弱かった。

 見下ろす智幸と視線があった。
 普段の冷静な眼差しとは打って変わって、消火しきれていない残火が確かに揺らめいていた。
 困ったような、それでいて不敵な笑みを浮かべ、

 「悪ぃけど加減してやれねぇな」

 再び有無を言わせない口付けをする。
 こうしてめちゃくちゃにされるのは嫌いじゃない。
 むしろ好きだ。
 智幸は口数も多くなく、気持ちを表に出さない。だからもろに感情や欲をぶつけられる感じがとても好きだった。求められているということに至福を感じていた。
 ずっと、こうしていたいなぁなんてどこかで考えていた。こうしてずっと智幸を感じていたい。
 いつまでもずっと。