森の中を飛ぶ。木から木へ、元々持っていた身体能力を最大限に生かして。忍として育てられたおかげでこういう道の方が動きやすい。ミラージュと合間見えているチームはいくつかあれど、僕の支援が必要なほどとは思えなかった。マネル程度の獲物なら一人でも倒せるだろう。
そう思った矢先、目の前にそれは現れた。
「あー」
真正面に僕の顔がある。認識した瞬間に後ろへ飛んだ。鬼火を周囲に漂わせようにも木が邪魔でできない。下手に引火でもしたら火事にならざるを得ないだろう。
「っ、こっちおいで、偽物くん」
木々を渡り歩きながらひらけた場所を目指す。マネル一匹なら問題ないけれどテュルキースバルトの森を焼き尽くすのだけは避けたい。
「……ハァ!?」
やけに素直にこちらへついてくるマネルを警戒しながらすぐ近くのひらけた場所へ出た、が。簡単にいうとひらけているわけではなかった。一瞬、資料として渡されていた元のマネルの姿が目に映ったがすぐにその場にいる全てのマネルが僕の姿を写し取った。
信じられない光景だ。無数の僕がこちらを見ている。顔は可愛いが、こうして集合されるとちょっと怖い。自分の顔を殴ったり引き裂いたりするのだけはしたくないから基本的に全部燃やしていけばいいだろう。数を数えるのも億劫なほど集まっているがこのくらいならまだ大丈夫だろう。
「いい度胸じゃない。やってやるっつーの! 覚悟して、偽物くん」
鬼火を体の周囲にまき散らせる。指先で鬼火を一つずつ、マネルへ飛ばした。
一度に出現できる鬼火は、その大きさにもよるが一体を燃やせる程度なら十個ほど。瞬時に十体の僕が燃え、元のマネルの姿に戻った。その場でくたばるマネルを目の端で見据えさらにまた十個の種火を周囲に出現させる。
十体、倒しても全体の数が減ったようには見えなかった。これを続けていれば自分の魔力が底をつくだろう。奥を見やると徐々に増えているようにも思える。戦闘力はほぼ無いにしても、これだけの数が村に降りていったらと思うと末恐ろしい。
「……チッ、しょうがないな」
鬼火を飛ばしながら太ももからクナイを二つ、取り出した。直上に跳躍し、木を蹴ってマネルの大軍に突っ込んでいく。僕の頭の上にクナイを突き刺す。本当は僕自身に傷つけることはしたくなかった。僕の可愛い顔に傷がつくのは嫌だ。
「にしても増えすぎじゃない……?」
無心で鬼火の生成、発射、クナイによる攻撃を繰り返し、マネルの死体は着実に上がっているのに一向に数は減らない。減らないどころか増えているのでは無いだろうか。こいつら一体どこから……?
「あっ」
考え事をしながら戦っていたせいだろうか。腕が取られた。マネルの頭の上に刺さったクナイが一つ、そのままになっている。勢いよく前に進んでいたせいか、突然支えのなくなった体はその場に叩きのめされた。
「……ったぁ」
受け身すら取れなかったせいで全身の体重がかかったまま左肩から落ちる。皮膚を擦りむいただけでなく体の節々に打ち身の痛みが広がっていった。自分の身長の上を飛んでいたせいかかなりの負荷がかかっていた。
体を起こす。僕……もとい、マネルたちの目が一斉に僕を見ていた。異常だ。なんだこの光景。若干の恐怖を感じながらも鬼火を出した。それぞれの魔力が弱まっているのがわかる。地面を埋めるほどのマネルの死体があるのに、どうして目の前にはこれだけのマネルがいるんだろう。
……弱気になっちゃダメだ。もう少し、もう少しだけ耐えればその辺を誰かが通りかかるかもしれない。鬼火で攻撃を仕掛けながらクナイを抜き取り、また跳んだ。